●● ● ひとりごとのつまったかみぶくろ
次の文章は、第4次少子化社会対策大綱案に対するパブリックコメントとして提出したものです。 |
少子化と少子化対策について
少子化と少子化対策について、私なりの考えを述べます。
全国的な出生数減少に併せて、東京一極集中という事象が認められます。全国の人口移動の状況を眺めると、地方の多くで、20代、30代の若い世代の転出超過が認められます。それに対して、東京圏の断トツの状況を筆頭に、大阪、名古屋、福岡などの大都市が転入超過となっております。そしてそれらの大都市の人口は女性の比率が高い、にもかかわらずその地域の合計特殊出生率が低いという特徴が認められます。極端な言い方をすれば、キャリアを求める若き独身(または結婚や出産を望まない、家庭・家族づくりを望まない)女性がそこに移動している、と観ることができます。これをどう考えるか、これを施策展開のためのアプローチのひとつの視点に定めたらどうでしょうか。
男女共同参画が叫ばれる今日、これが女性の力発揮の呼びかけとなり、主婦を忌避し、出産や育児を負担に思い、上記のような状況を産み出しているのかもしれません。仮にそうであったとしても、この新しい価値観や文化を葬るわけにはいきません。女性の、働きたい、社会参加したいという希望や意欲は、最大限に尊重し、保障しなければならないことと思います。
勤労者は、基本的には、家庭を持つ身であり、父であり、母である人々です。それが損なわれていることが問題の起点であると私は思っています。発達した資本主義社会は、自由に行動できる個人を求める社会であり、そこでは家族は必ずしも必要条件ではなく、よって家庭や家族を持つことを喜びではなく、負担、邪魔なものと捉えさせてしまう側面があります。
大都市でも地方でも、核家族化が進行し、そして夫婦共にフルタイムの就労が通常の家庭の形態になりつつあります。これに対処するきめ細かい社会の配慮の必要性を感じます。
その中でまず指摘したい点が、世代相互の援け合い機能の崩壊です。かつては祖父母(老夫婦)が保育所送迎の代行等、若夫婦の子育てを支援してきたものでした。しかし今日では65歳までの就労が普通となり、老夫婦も勤労者であるため、若夫婦を援けてあげることができません。よって行政によるきめ細かい子育て支援策が今以上に必要になります。そしてイクメンプロジェクト推進等、家事を専ら女性に課してきた旧来の伝統や文化の変革が急務と思います。
次に指摘したい点が、大都市周辺の各市町の人口昼間流出入です。つまりベッドタウンの存在です。これは、市域を越えて、交通機関を利用して毎日通勤している人々が多数おられることを示します。これは職業選択において大都市にある企業・事業所への就職志向が反映していると思います。しかしこれは子供を持つ勤労者世帯にとって試練を課すものになります。保育所の送迎や子供の夕食の支度に間に合うように帰宅するということはけっこう大変なことです。これに間に合わない状況であると、結局、職場の近くつまり大都市に転居、更にはこれを嫌って、出産そのものを控えるという悪循環を産むことになってしまうと思います。これは多彩な公共交通機関や自動車自転車等通勤をスムーズにする中近距離交通インフラの整備によって緩和させることができると思います。
そして私が最も大切と思うことが、人間にとって家族こそが最大の宝ということを知らしめる教育(思想・価値観・仕組み・文化)の創生です。これをすべての国民が学ぶように、学校のカリキュラムに教科または単元として設けてはどうでしょうか。
これらの有機的な整備により、希望する仕事に就きたいという人々の思いを保障し、子育てや通勤を難儀と感じない、そして家庭・家族を尊重する人づくりに寄与し、そうして、出生数減少を抑制する施策になるのではないかと思います。
更に、世界の流れや努力に目を向けることによって、参考事象や改善策を見出すことができるものがあると思います。
一つ目は、認定保育ママ制度です。これはフランス等が採っている取り組みです。フランスは、世界に先駆けて、百年も前に人口減少の課題を抱えた国でしたが、それを解決させた施策の一つとして評価されています。これが夫婦共働きと、そのもとでの子育てを保障していると思います。
二つ目は、ワーク(ジョブ)シェアリングです。ドイツでは、夫婦等による仕事の分かち合いにより、労働時間の短縮や協働等の有機的な価値を生み出しております。これが世界一労働時間の短い国に導くことに貢献した条件の一つと思っております。
これらをエビデンスとして捉え、普及に向けての取り組みを進めることも大切と思います。
加えて三つ目に、在宅勤務の普及を挙げたいと思います。働く場が家庭とともにあれば、勤労者、父、母それぞれの機能の併存のもとで生活できます。
2020.5.11