社会保障制度の推進に関する要望 昭和二十九年十二月二十四日 社会保障制度審議会会長発 内閣総理大臣宛 国民福祉の向上と民生の安定を基本とし、民主主義社会 の平和と繁栄をはかることは日本国憲法に一貫せる精神で ある。かかる精神に則り、本審議会はすでに昭和二十五年 社会保障制度に関する勧告を行い、その後においてもしば しば社会保障制度の推進に関して勧告を行っているところ である。 しかしその後における推移をみるに、社会保障制度の改 善拡充に関しては種々の立法が行われ、また社会保障に関 する国家予算も逐次増大しつつあるが、わが国社会保障制 度の綜合的発展に関する構想と一貫した計画の樹立につい て、考慮されることが少なかったので、われわれの期待を 充分にみたすことができなかった。ために、各制度間に存 する多くの矛盾や不均衡も依然として解決されていないの みか却って増大の傾向にすらあり、また社会保障に対して 多くの国民に将来への光明を約束していない。しかも一方、 現行社会保障制度の上においては、健康保険における財政 危機や単価等の問題をはじめとする国民医療の問題、各制 度に跨がる結核の問題、失業問題、零細企業従業者に対す る社会保険の適用拡大問題、公務員の恩給年金制度の問題 等当面解決を迫られている重要な問題は少くないのである。 以上の諸点に鑑み、本審議会は政府が社会保障制度確立 のために統一ある綜合政策を樹立するとともに当面の社会 保障諸問題の解決に対し、最善の努力を致されんことを強 く要望するものである。 結核対策の強化改善に関する由入れ書 昭和二十九年十二月二十四日 社会保障制度審議会会長発 内閣総理大臣宛 本審議会はさきに社会保障制度全般の問題に関連して結 核対策についてもその所見を明らかにしている。しかしな がら、さきに厚生省が行った結核実態調査の結果によれば、 結核死亡率の激減にもかかわらず、結核の実態は医療を要 する者二九二万人(このうち入院を要する者一三七万人)、 休養又は注意を要する者を含めると五五三万人という、従 来の予想数をはるかにこえた重大な事態を示している。し かも、その侵じゅん率は、国民の各階層と各地域に亘って 高く、かつ、多数の無自覚患者や排菌者が放任されている という由々しい事実が存在しているのである。 また最近における結核治療法の著しい進歩等に伴い、結 核医療費は著しく高額化している。ために、生活保護制度 においては医療扶助費の膨脹をもたらし、社会保険制度に おいてはその財政をおびやかしている。また、これら制度 の外にある人々にあっては問題はさらに深刻である。 本審議会は、かかる諸般の情勢から、あらためて結核対 策の検討を行っているところであるが、政府においてもこ れが今日の国民生活上および社会保障制度上極めて重大な 問題である点に思いを致され、明年度における政策の決定 および予算編成等の上においては、結核対策の強化改善に 重点的な配慮をされるよう要望してやまない。 社会保障制度の企画運営方法の 改善に関する件 昭和三十年三月三十日 社会保障制度審議会会長発 内閣総理大臣宛 社会保障制度の企画運営の実情にかんがみ、これを早急 に改善する必要があると思われるので、社会保障制度審議 会設置法第二条第一項の規定により別紙のとおり勧告する。 社会保障制度の企画運営方法の改善に関する勧告 本審議会は、昨年末第一次鳩山内閣の成立に際して、わ が国の社会保障制度の発展のために、政府が、社会保障に ついて一貫した総合政策を、樹てられるよう要望したので あるが、これがためには、わが国の現在及び将来における 国家財政、国民の経済力その他わが国の特殊事情をよく勘 案して、総合的に企画し、かつこれを年次計画的に整備し てゆく必要がある。しかも、現行の社会保障制度の各分野 においては、緊急に解決することを余儀なくされている幾 多の問題が存在するが、これを解決するにあたっても、制 度そのものの基本にふれ、かつ社会保障制度全般の見地か ら、検討するのでなければ、もはや到底根本的な打開策を 講じ得ない時期に到達している。 ひるがえって、わが国の社会保障制度の現状をみるに、 これに対する国庫負担その他の総費用が、累年増大し、諸 種の立法も行われてきたにもかかわらず、幾多の矛盾や不 均衡あるいは無駄が少くないのは、もとより色々な原因が 考えられるが現在社会保障制度に関する行政が各省庁にま たがり、その間に何らの有効な総合調整機関も存在しなか ったことが、重要な原因と考えられる。 以上のごとき諸事情からして、総合的に社会保障制度を 企画し、かつ現行制度の欠陥を是正するためには、社会保 障制度の企画及び運営を、一つの機関に統合することが望 ましい。したがって、これを一挙に解決することが困難で あるとするならば、少くとも、現在各省庁にまたがって、 ばらばらに企画運営されている社会保障に関する行政を、 効率的かつ公正なものとして、調整するとともに、更に今 後の社会保障制度の総合政策をも企画し得るような、強力 な機構を確立することが最も必要である。しかし現在、わ が国の財政力に余裕が乏しいとするならば、このことは一 層急を要する。 本審議会も、これが実現について、すすんで協力せんと するものであるが、このことに関し、政府が速かに必要な る措置を講ぜられんことを、強く要望するものである。 結核対策の強化改善に関する件 昭和三十年三月三十日 社会保障制度審議会会長発 内閣総理大臣宛 わが国結核の実態と、現下の国民生活ならびに社会保障 制度の現状にかんがみ、結核対策を強化改善することは、 極めて緊要である。よって、社会保障制度審議会設置法第 二条第一項の規定により別紙のとおり勧告する。 結核対策の強化改善に関する勧告 結核問題は、わが国社会保障制度の上において極めて重 要な課題である。かかる観点から、本審議会は、社会保障 制度全般の問題に関連して、結核対策に関しても、すでに その所見を明らかにしている。その後結核問題については 新たに検討すべき事態は少くない。すなわち、第一には、 結核死亡率が激減をみるに至っていること。第二にはそれ にもかかわらず、さきに厚生省が行った結核実態調査の結 果によれば、結核患者数が驚くべき数に達していること、 第三には、その後結核に関し化学療法が著しい進歩発展を みていることなどである。ことに右厚生省調査の示すとこ ろによれば、結核患者は、国民の各階層とあらゆる地区に わたって高度の浸じゅん率を示しており、しかもその中に は多数の無自覚患者や排菌者が存在している点は重視しな ければならない。 また、結核医療費が著しく高額化している今日、社会保 険などによって保障されていない人々の結核医療費問題が 極めて深刻であることはいうをまたない。その結果は、生 活保護制度による医療扶助費の激増をもたらしつつある が、一方社会保険医療に関しても結核医療費の増加は極め て顕著なものがあり、これら財政上の見地からも放任し難 い情勢にある。 本審議会は、かかる諸般の情勢から、結核対策に関して 検討を行った。その結果、結核問題は、国民の生活、労 働、生産、国民経済などにわたる、極めて広範、かつ、重 要な問題であるという見地に立って、国政上のあらゆる観 点から総合的に施策することの必要性を痛感するものであ る。しかして、社会保障の見地からは、最終的にいって、 すべての国民を包括した医療保障制度を確立することが最 善の方策と結論するものであり、速やかにその実現を念願 するものである。しかし、これがためには現行の社会保険 諸制度、医療制度その他諸般の制度にわたって根本的な改 革が行われなければならない。しかして、膨大な数に達す る結核患者に対応した当面の結核対策としても、ただ単に 従来の諸政策の拡大案のみをもってしては公私の負担を増 大する割合にはその効果をあげることは少ない。しかも、 わが国民は今日すでに結核のため多額の費用を負担してお り、また現在結核患者に対する経費の支出にも著しい不均 衡が存在する点を反省する必要がある。これらの諸点から も結核対策は慎重に検討しなければならない。 すなわち、第一に、結核問題は国民の生活、労働、経済 などと重大な関係があり、すべての人々の家庭生活、職 域生活を通ずる。これと不可分な問題である点に基礎をお いて考えなければならない。第二にこの問題は、医療費問 題の中でもとくに、個人の経済力や生活圏を越えた国家的 な問題である点に根本認識を持たなければならない。第三 には、国民経済上の見地から考えるところがなければなら ない。すなわち、結核が極めて多額の経費を要すものであ る点にかんがみ結核対策は、将来にわたって医療費負担の 膨脹化をきたさないよう予防施策に重点をおくなど、その 効率的な施策と運営について十分配慮する必要がある。ま た、その医療面についてもわが国の経済力から考えて経費 の節減が期せられるよう合理的な配慮が極めて肝要である。 かかる見地から広く結核問題に関連する諸施策を検討す るとき、改善せられるべき点が少くないが、ここに主とし て現行の結核対策に関して、改善拡充せらるべき重要な諸 点をあげれば次のとおりである。 |
一、結核対策の今後の重点について わが国における結核の実態は、患者数が極めて多く、 その一部の者のみが措置され、多数の者は放置されてお りまた多くの者は無自覚で潜在状態にある。しかも病気 を意識しているといないとを問わず、困難な社会的経済 的諸条件の下に生活しあるいは労働に従事しつつある者 が少くない実情である。 右の如きわが国の結核の実情に加えるに、現在のとこ ろ、結核に対しては排菌者の収容隔離によるほか、適確 な感染防止は期し難い状況にあるので、わが国の結核問 題に処する方策としては、まず第一点として、その発病 の防止に重点をおいて考慮することが肝要である。しか してこれがためには、種々の観点からその対策の強化改 善を考えなければならないが、とくに最近の化学療法の 顕著な発展にかんがみ、従来の対策に加えて、化学療法 剤を発病防止に使用することなどについても速かに検討 を行うなど発病防止のための施策の強力な推進について 考慮すべきである。 つぎに現在のわが国の結核対策が、一部の入院患者な どのためにのみ多額の費用があてられ、大多数の者は放 置されているので、今後の結核対策としては、第二点と して、これらの放置されている結核患者への対策に眼を 向けなければならない。もちろん結核に対しては、病床 の拡充などの措置も望ましいが、一方近年結核医療の方 法が著しく進歩しつつある点をも併せて考慮して、これ ら放任状態にある多数の患者にも結核対策が浸透して行 われるよう、あらゆる施策を考慮する必要がある。すな わち、これら放置状態にある多数の患者、とくに、その 職場または現在の生活をはなれては十分な療養をなし得 ない多数の患者について、それらの人々が安心して医療 をうけ得るような・・場合によっては医療をうけつつ働 きうるような者に対してはそれに適応した・・環境の育 成、適正な療養の指導、健康管理の徹底などについての 施策を強化すべきである。 以上の施策を強力に推進することによって、現在多数 の潜在患者があるためと、療養が適正に行われていない 患者が少くないためなどのため、知らず知らずの間に感 染し、あるいは発病または増悪しつつあるが如き、現在 の結核の悪循環を断ちきるように努めるべきである。 二、結核対策の総合的な施策と運営について 結核対策は、単に医療面を中心とした観点からのみで なく、雇用、労働、職業、住宅、栄養など広く各分野に わたって、総合的な観点からその対策を樹立すべきであ る。なおこれがためには、生活や労働の中において、結 核患者及び回復者の健康管理が、円滑に行われ得るよう な社会環境の醸成が急務である。これらの見地から、左 記の諸点はとくに必要と思われるものである。 一 ややともすれば結核患者を忌避し、せまい職域や生 活域の浄化にのみ熱心な現状を改め、医療をうけつつ 働き得るような者については、その職場において適当 な労務に従事しつつ、治療効果をあげ得るような方途 と施設について考慮すること。 二 回復者の再就業のため、できる限り前職への復帰ま たは従来の企業における再雇用などにつき、強力な措 置をとるほか、たとえば、医療施設など適当な職場の 確保をはかるとともに、後保護施設、職業補導施設、 共同作業場などの施設を強化し就業機会の増大につい て考慮すること。 三 結核対策の実施については、中央地方を問わず、各 関係部局及び機関の緊密な連絡の強化をはかるととも に、それぞれの施策が無秩序に、かつ、形式的にのみ 行われるが如きことのないよう、諸施策の総合化をは かり実効をあげる点に留意する必要があること。 三、結核の予防、健康診断などについて 結核対策はその予防に重点をおいて推進する必要があ る。この点から健康診断の徹底はとくに必要であり、こ れに伴う患者区分とツ反応陽転者への措置は重要である。 このためには、予防活動のための組織及び機構の整備と、 その運営の改善をはかるとともに、広報活動の強化など について措置する必要があるが、とくに左の諸点は保健 所の拡充改善とあわせて必要な事項である。 一 健康診断の対象範囲と年令基準を拡大すること。 二 職域における集団感染または家族感染の防止に対す る措置を強化するとともに、患者家族の健康診断を強 化すること。 三 各職域における健康診断は、全従業者に徹底して行 われるよう措置するとともに、とくに中小以下の企業 従業者についても徹底するように、法的規制を強化す ること。なおこれがためには、健康診断の費用につい て必要な措置をとるほか、健康診断の機会を十分なら しめるよう、その機動的、能率的実施について措置す ること。 四 健康診断をして適確ならしめ、その実施能率と効果 の向上をはかるため、担当医師などの質的向上をはか るとともに、設備、機械などの性能の引上げを考慮す ること。 五 健康診断の実施については、保健所のみならず、そ の能力ある診療機関の協力を得て、総力をあげて行い 得るよう措置すること。 六 結核の予防については、B・C・Gの使用によるほ か、その感染または発病の防止について、確実な方法 をもたない現況にあるが、より有効な方法の発見につ いて、緊急に総合的な研究を国費により行うこと。な おこの点に関し化学療法剤を発病防止に使用すること につき、技術的な見地から速かに研究を行うとともに、 化学療法剤の出現に関連して新しい観点から、化学療 法剤の使用が結核患者の安静の程度、作業量などに及 ぼす影響などについての研究をも行うこと。 四、保健所について 健康診断の徹底、在宅患者の療養指導、結核に関する 正しい知識の普及など、結核対策を効果的に行うために は保健所をそのセンターとしてその機能の拡充強化をは かるべきである。このためには現在の保健所について、 その施設を整備し陣容を充実し、運営を改善するととも に、さらに保健所網の整備拡充をはかる必要があるが、 とくに左記の点については考慮する必要がある。 一 保健所は従来より種々の努力が試みられたにもかか わらず、依然として著しく医師が不足し、その陣容が 極めて不十分と認められるので、この際有能なる医師 の充実について根本的な改善の措置を講ずること。こ れがためには、給与その他待遇の改善、学校教育など における公衆衛生面の教育の強化などをはかるほか、 基本的には、必要要員を確保するため、組織的専門的 研修を行うことが極めて重要であり、あわせてこれら の医師に十分な研究の機会を与えるなど、あらゆる観 点からその原因を追及して必要な措置を講ずること。 二 保健所の機能を向上させ、かつその活動を能率的に するため、諸設備を整備改善するとともに、その機動 力の強化をはかること。 三 地域内の事業所従業者、学校職員及び在学者ならび に一般住民などの健康診断の実施については、各関係 機関と緊密に連絡して、保健所が中心となり、その総 合協力の下に、計画的に洩れなく施行し得るように態 勢を整備すること。 四 在宅患者の療養指導と、家族に対する予防措置の徹 底などをはかるため、保健婦の増員をはかり、かつそ の活動を促進するよう、所要の措置を講ずること。 五 結核の予防については、保健所を中心として、各関 係機関及び地区内医師の協力の下に、また治療につい てはその地区内の医師が緊密な協力の下に、各機関が 一致して活動し得るような協力態勢を強化すること。 六 結核に関する正しい知識の普及その他結核対策の侵 透と国民的協力を得るため、地区衛生組織を育成強化 すること。 七 保健所に関して、前述の如く、改善を要するところ が多いにもかかわらず、これが実施されないのは、地 方財政の逼迫が大きな原因となっていると考えられる ので、保健所に要する経費の国庫負担の増額をはかる こと。 五、結核病床及び在宅患者(就労中のものを含む。) 従来の結核病床の増床計画を再検討し、その増加をは かることは必要であるが、同時に在宅患者の指導につい ての措置を強化する必要がある。しかして病床の拡充は 国民経済力の現状などにかんがみ、医療の水準の低下を 来たさない限度において、さしむき量的拡充に重点をお く必要がある。また、その配置、病床の種別、経営主体 などについても、画一的な形式化を避け、実情に即して 効率的に増床を行う必要があり、病床回転率の向上につ いても工夫する必要がある。次の諸点はこれらに関して とくに必要と思われるものである。 一 結核病床の設置費補助については、一定の規格基準 のみにかかわることなく、外科設備をもつ療養所、一 般療養所軽快病棟などにわたって広く行い得るように し、また既設病院などに附設した増床を行い経済的な 拡充をはかること。 二 私的医療機関の協力を求めるため、私的医療機関の 結核病棟拡充について、低利融資の方途を講ずること。 三 結核病床については、軽費な軽症患者用病棟などの 拡充を積極的に考えるとともに、その配置について、 適正な分布と利用率の増大を考慮すること。 四 病床回転率の向上などをはかるため、患者の病状に 適応した病床の利用を考えること。 五 在宅患者については、保健所を中心とし、保健婦、 主治医、医療社会事業担当者などの総合協力の下に、 巡回訪問班のごとき機構を整備し、組織的に、その予 防、医療ならびに生活の指導管理についての措置を強 化すること。 六、結核医療費公費負担について 結核予防法に基く結核医療費の公費負担は、現在極め て限られた範囲であり、また、その負担は、各都道府県 などにおいて取扱の相違があるほか、社会保険医療との 関係においても極めて複雑化しているので、公費負担の 範囲程度を拡大するとともに、これを国の義務負担とし て統一し、社会保険医療との調整をはかるなど概ね左の 如き方途を講ずる必要がある。 一 結核医療費に対する国庫の負担率は、少くともその 五割程度に引上げて、これを義務負担とし、患者の負 担分を軽減すること。 二 公費負担となる結核医療の範囲については再検討を 行い、一定範囲の入院費用についても考慮すること。 三 社会保険医療の対象となっている者については、国 庫から直接に社会保険財政へ補助を行うように改め、 当該社会保険医療については、少くとも結核予防法に よる公費負担の医療と同等程度以上の医療給付が与え られるように、これを法定給付化すること。 七、結核療養担当者の再教育などについて 結核は、その診断、医療、手術などの各面を通じ、高 度の専門的知識と技術を必要とするので、これら、専門 教育を徹底的に行い、必要人員の確保をはかる必要があ る。これがためには、関係大学などの機関を有効に利用 するほか、国としても、必要な機関を設け、中央地方を 通ずる組織的な研修と再教育の機構を整備すべきである。 また必要数のX線技術者、看護婦、保健婦の養成確保に ついても考慮する必要がある。 八、結核に関する正しい知識の普及について 諸種の結核対策を徹底して行い、また家庭たると職場 たるとを問わず、その予防、療養看護などに万全を期す るためには、国民各自が、最近の結核病相の変化に対応 した結核の正しい知識と十分な認識をもつことが極めて 必要と考えられるので、あらゆる機関と組織を通じ、そ の啓発普及をはかるよう措置すべきである。 九、結核保険制度について 今日結核の医療費は、個人の経済でまかなうことがほ とんど困難である。またその性格からいっても、社会問 題として考慮すべきであり、従って国の責任の下に、す べての国民が協力して、その解決をはかるような態勢を 確立する要がある。 さらに、結核対策は、その予防、治療費び経済の面を 通じ一元的組織的に行い、かつ、全国民を対象として考 慮する必要がある。かかる観点からいって、結核保険の ごとき制度による、結核対策の統一的施行の方法を早急 に研究すべきである。 |