帝国議会に対する終戦経緯報告書の付属書類
別紙第一 米、英、支三国宣言(一九四五年七月二十六日「ポツダム」に於て)
別紙第二 米、英、支三国宣言の条項受諾に関する八月十日付帝国政府申入
別紙第三 合衆国、連合王国、「ソヴィエト」社会主義共和国連邦及中華民国の各政府の名に於ける合衆国
政府の日本国政府に対する回答
別紙第四 米、英、ソ、支四国に対する八月十四日付帝国政府通告
別紙第五 米、英、支三国宣言の条項受諾に当り四国政府に対し帝国政府の希望開陳の件
別紙第六 停戦実施方に関する米国政府通告文
別紙第七 日本天皇、日本政府、日本大本営宛連合国最高司令官発電信要旨(八月十六日)
別紙第八 詔書
別紙第九 降伏文書
別紙第十 一般命令第一号(陸、海軍)
(別紙第一)訳 文
米、英、支三国宣言(一九四五年七月二十六日「ポツダム」に於て)
一、吾等合衆国大統領、中華民国政府主席及「グレート・ブリテン」国総理大臣は吾等の数億の国民を代表
し協議の上日本国に対し今次の戦争を終結するの機会を与ふることに意見一致せり
二、合衆国、英帝国及中華民国の巨大なる陸、海、空軍は西方より自国の陸軍及空軍に依る数倍の増強を受
け日本国に対し最後的打撃を加ふるの態勢を整へたり右軍事力は日本国が抵抗を終止するに至る迄同国に
対し戦争を遂行するの一切の連合国の決意に依り支持せられ且鼓舞せられ居るものなり
三、蹶起せる世界の自由なる人民の力に対する「ドイツ」国の無益且無意義なる抵抗の結果は日本国国民に
対する先例を極めて明白に示すものなり現在日本国に対し集結しつつある力は抵抗する「ナチス」に対し
適用せられたる場合に於て全「ドイツ」国人民の土地、産業及生活様式を必然的に荒廃に帰せしめたる力
に比し測り知れざる程更に強大なるものなり吾等の決意に支持せらるる吾等の軍事力の最高度の使用は日
本国軍隊の不可避且完全なる壊滅を意味すべく又同様必然的に日本国本土の完全なる破壊を意味すべし
四、無分別なる打算に依り日本帝国を滅亡の淵に陥れたる我儘なる軍国主義的助言者に依り日本国が引続き
統御せらるべきか又は理性の経路を日本国が履むべきかを日本国が決定すべき時期は到来せり
五、吾等の条件は左の如し
吾等は右条件より離脱することなかるべし右に代る条件存在せず吾等は遅延を認むるを得ず
六、吾等は無責任なる軍国主義が世界より駆逐せらるるに至る迄は平和、安全及正義の新株序が生じ得ざる
ことを主張するものなるを以て日本国国民を欺瞞し之をして世界征服の挙に出づるの過誤を犯さしめたる
者の権力及勢力は永久に除去せられざるべからず
七、右の如き新株序が建設せられ且日本国の戦争遂行能力が破砕せられたることの確証あるに至るまでは連
合国の指定すべき日本国領域内の諸地点は吾等の茲に指示する基本的目的の達成を確保するため占領せら
るべし
八、「カイロ」宣言の条項は履行せらるべく又日本国の主権は本州、北海道、九州及四国並に吾等の決定す
る諸小島に局限せらるべし
九、日本国軍隊は完全に武装を解除せられたる後各自の家庭に復帰し平和的且生産的の生活を営むの機会を
得しめらるべし
十、吾等は日本人を民族として奴隷化せんとし又は国民として滅亡せしめんとするの意図を有するものに非
ざるも吾等の俘虜を虐待せる者を含む一切の戦争犯罪人に対しては厳重なる処罰を加へらるべし日本国政
府は日本国国民の間に於ける民主主義的傾向の復活強化に対する一切の障礙を除去すべし言論、宗教及
思想の自由並に基本的人権の尊重は確立せらるべし
十一、日本国は其の経済を支持し且公正なる実物賠償の取立を可能ならしむるが如き産業を維持することを
許さるべし但し日本国をして戦争の為再軍備を為すことを得しむるが如き産業は此の限に在らず右目的の
為原料の入手(其の支配とは之を区別す)を許可さるべし日本国は将来世界貿易関係への参加を許さるべし
十二、前記諸目的が達成せられ且日本国国民の自由に表明せる意思に従ひ平和的傾向を有し且責任ある政府
が樹立せらるるに於ては連合国の占領軍は直に日本国より撤収せらるべし
十三、吾等は日本国政府が直に全日本国軍隊の無条件降伏を宣言し且右行動に於ける同政府の誠意に付適当
且充分なる保障を提供せんことを同政府に対し要求す右以外の日本国の選択は迅速且完全なる壊滅あるの
みとす
※原文
(別紙第二)訳 文
米、英、支三国宣言の条項受諾に関する八月十日付帝国政府申入
帝国政府に於ては常に世界平和の促進を冀求し給ひ今次戦争の継続に依り齎さるべき惨禍より人類を免か
れしめんが為速なる戦闘の終結を祈念し給ふ天皇陛下の大御心に従ひ数週間前当時中立関係に在りたる「ソ
ヴィエト」連邦政府に対し敵国との平和回復の為斡旋を依頼せるが不幸にして右帝国政府の平和招来に対す
る努力は結実を見ず茲に於て帝国政府は天皇陛下の一般的平和克服に対する御祈念に基き戦争の惨禍を出来
得る限り速に終止せしめんことを欲し左の通り決定せり
帝国政府は一九四五年七月二十六日「ポツダム」において米、英、支三国政府首脳者により発表せられ爾
後「ソ」連政府の参加を見たる共同宣言に挙げられたる条件を右宣言は天皇の国家統治の大権を変更するの
要求を包含し居らざることの了解の下に受諾す
帝国政府は右了解にして誤りなきを信じ本件に関する明確なる意向が速かに表示せられんことを切望す
(別紙第三)訳 文
合衆国、連合王国、「ソヴィエト」社会主義共和国連邦及中華民国の
各政府の名に於ける合衆国政府の日本国政府に対する回答
「ポツダム」宣言の条項は之を受諾するも右宣言は天皇の国家統治の大権を変更するの要求を包含し居らざ
ることの了解を併せ述べたる日本国政府の通報に関し吾等の立場は左の通り
降伏の時より天皇及日本国政府の国家統治の権限は降伏条項の実施の為其の必要と認むる措置を執る連合
国最高司令官の制限の下に置かるるものとす
天皇は日本国政府及日本帝国大本営に対し「ポツダム」宣言の諸条項を実施する為必要なる降伏条項署名
の権限を与へ且之を保障することを要請せられ又天皇は一切の日本国陸、海、空軍官憲及何れの地域に在
るを問はず右官憲の指揮下に在る一切の軍隊に対し、戦闘行為を終止し武器を引度し及降伏条項実施の為
最高司令官の要求することあるべき命令を発することを命ずべきものとす
日本国政府は降伏後直に俘虜及被抑留者を連合国船舶に速かに乗船せしめ得べき安全なる地域に輪送すべ
きものとす
最終的の日本国の政府の形態は「ポツダム」宣言に遵ひ日本国国民の自由に表明する意思に依り決定せら
るべきものとす
連合国軍隊は「ポツダム」宣言に掲げられたる諸目的が完遂せらるる迄日本国内に留まるべし
(別紙第四)訳 文
米、英、ソ、支四国に対する八月十四日付帝国政府通告
「ポツダム」宣言の条項受諾に関する八月十日付帝国政府の申入並に八月十一日付「バーンズ」米国国務長
官発米英ソ支四国政府の回答に関連し帝国政府は右四国政府に対し左の通り通報するの光栄を有す
一、天皇陛下に於かせられては「ポツダム」宣言の条項受諾に関する詔書を発布せられたり
二、天皇陛下に於かせられてはその政府及大本営に対し「ポツダム」宣言の諸規定を実施する為必要とせら
るべき条項に署名するの権限を与へ且之を保障せらるるの用意あり又陛下に於かせられては一切の日本国
陸、海、空軍官憲及右官憲の指揮下に在る一切の軍隊に対し戦闘行為を終止し武器を引渡し前記条項実施
の為連合国最高司令官の要求することあるべき命令を発することを命ぜらるるの用意あり
(別紙第五)
米、英、支三国宣言の条項受諾に当り四国政府に対し帝国政府の希望開陳の件
帝国政府は「ポツダム」宣言の若干条項の実施の円滑を期する為切実なる希望を存し之を右宣言実施条項署
名の際又はその他適当なる機会に開陳せしめ度き処或は斯かる機会なきことを虞れ茲に之を瑞西国政府の斡
旋に依り米英支ソ四国政府に伝達せんとす
一、ポツダム宣言中の占領の目的が専ら「ポツダム」宣言に掲げられたる基本的目的の達成を保障するに在
るに鑑み四国側に於ては帝国政府が該条項を誠意を以て実行せむとするものなるに信頼し帝国政府の責務
遂行を容易円滑ならしめ且無用の紛糾を避くるが如く配慮あり度之が為
(1)連合国側の艦隊又は軍隊の日本本土進入に付ては日本側準備の関係もあり予めその予定を通報あり
たきこと
(2)連合国の指定すべき日本国領域内の占領の地点は其の数を最少限度に止め且其の選択に当り例へば
東京を除外すること並に右当該地点に派駐せらるる兵力も象徴的程度に止むること
を切実に考慮あり度
二、武装解除は海外に在る三百万余の軍隊に関連あると共に日本将兵の名誉に直接触れたる最も困難機微な
る問題なること言を俟たざる所にして之が実施に付ては帝国政府に於て最も苦慮し居る次第なるが之が実
効を期する最善の方法としては天皇陛下の御命令に基き帝国軍自ら実施し連合国は其の円滑なる実施の結
果武器の引渡を受くるものと致し度
大陸に在る帝国軍の武装解除に当りては第一線より逐次後方に向け段階的に実施することとし度
武装解除に関連し海牙陸戦法規第三十五条を準用し軍人の名誉を重んじ帯剣は之を認められ度く連合国側
が武装を解除せられたる日本軍人を強制労役に使用する如き意図を有せざるものと了解す海外に於て武装
を解除せられたる日本軍人を其の儘永く海外に駐留せしめることは彼我双方にとり面白からざる種々の複
雑困難なる問題を生ずるの虞あるに付連合国側に於て速かに之を日本内地に撤収せしむる為に必要なる船
舶及其の輪送上の便宜を供給せられんことを切望す
三、停戦に関しては遠隔の地に在る部隊に天皇陛下の御命令を充分に徴底を期する要あるを以て停戦の実施
期日に付ては幾分の余裕を置かれ度
四、太平洋の離島に在る帝国軍隊に対し必要欠くべからざる程度の食糧医薬品を送付し及之等離島より本土
に傷病兵を輪送する為至急連合国側に於て所要の措置を講ずるか又は我方に対し便宜を供与せられ度
(別紙第六)訳 文
停戦実施に関する米国政府通告文
貴方は左の措置を執られたし
一、日本軍隊の軍事行動の急速なる停止を指令し連合国最高司令官に右停戦実施の日時を通報すること
二、日本軍隊及司令官(複数)の配置に関する情報を有し且連合国最高司令官及其の同行する軍隊が正式降
伏受理の為連合国最高司令官の指示する地点に到着し得る様連合国最高司令官の指令する打合を為すべき
十分の権限を与えられたる使者(複数)を直に連合国最高司令官の許に派遣すること
三、降伏の受理及之が実施の為「ダグラス・マッカーサー」元帥が連合国最高司令官に任命せられたる処同
元帥は正式降伏の時、場所及其他詳細事項に関し日本政府に通報すべし
(別紙第七)訳 文
日本天皇、日本政府、日本大本営宛連合国最高司令官発電信要旨(八月十六日)
日本側は連合国の降伏条件を受諾せるに因り連合国最高司令官は日本軍隊に依る戦闘の即時停止を命ず右停
止の発動日数時間を最高司令官に通告すべし然るときは連合国軍は戦闘停止を命ぜらるべし
最高司令官は更に「マニラ」市に在る其司令部に天皇、日本政府、日本大本営の名に於て降伏条項実施に必
要なる諸要求を受理する権限を有する代表者を派すべし右代表者は到着次第最高司合官の要求を受理する権
限を付与せる旨の天皇陛下の御委任状を呈示すべし右代表は日本陸、海、空軍を代表する権限ある顧問官を
帯同すべく空軍顧問官は東京地区の航空施設に通暁する者たるべし
右代表一行の安全舵行の手筈は左の如し(以下略)
(別紙第八)
詔 書
朕ハ昭和二十年七月二十六日米、英、支各国
政府ノ首班カポツダムニ於テ発シ後ニ蘇連邦
カ参加シタル宣言ノ掲クル諸条項ヲ受諾シ帝
国政府及大本営ニ対シ連合国最高司令官カ提
示シタル降伏文書ニ朕ニ代リ署名シ且連合国
最高司令官ノ指示ニ基キ陸海軍ニ対スル一般
命令ヲ発スヘキコトヲ命シタリ朕ハ朕カ臣民
ニ対シ敵対行為ヲ直ニ止メ武器ヲ措キ且降伏
文書ノ一切ノ条項並ニ帝国政府及大本営ノ発
スル一般命令ヲ誠実ニ履行セムコトヲ命ス
御 名 御 璽
昭和二十年九月二日
内閣総理大臣
各国務大臣
(別紙第九)訳 文
降伏文書
下名は茲に合衆国、中華民国及「グレート・ブリテン」国の政府の首班が千九百四十五年七月二十六日「ポ
ツダム」に於て発し後に「ソヴィエト」社会主義共和国連邦が参加したる宣言の条項を日本国天皇、日本国
政府及日本帝国大本営の命に依り且之に代り受諾す右四国は以下之を連合国と称す
下名は茲に日本帝国大本営並に何れの位置に在るを問はず一切の日本国軍隊及日本国の支配下に在る一切の
軍隊の連合国に対する無条件降伏を布告す
下名は茲に何れの位置に在るを問はず一切の日本国軍隊及日本国臣民に対し敵対行為を直に終止すること、
一切の船舶、航空機並に軍用及非軍用財産を保存し之が毀損を防止すること及連合国最高司令官又は其の指
示に基き日本国政府の諸機関の課すべき一切の要求に応ずることを命ず
下名は茲に日本帝国大本営が何れの位置に在るを問わず一切の日本国軍隊及日本国の支配下に在る一切の軍
隊の指揮官に対し自身及其の支配下に在る一切の軍隊が無条件に降伏すべき旨の命令を直に発することを命
ず
下名は茲に一切の官庁、陸軍及海軍の職員に対し連合国最高司令官が本降伏実施の為適当なりと認めて自ら
発し又は其の委任に基き発せしむる一切の布告、命令及指示を遵守し且之を施行することを命じ並に右職
員が連合国最高司令官に依り又は其の委任に基き特に任務を解かれざる限り各自の地位に留り且引続き各自
の非戦闘的任務を行ふことを命ず
下名は茲に「ポツダム」宣言の条項を誠実に履行すること並に右宣言を実施するため連合国最高司令官又は
其の他特定の連合国代表者が要求することあるべき一切の命令を発し且斯る一切の措置を執ることを天皇、
日本国政府及其の後継者の為に約す
下名は茲に日本帝国政府及日本帝国大本営に対し現に日本国の支配下に在る一切の連合国俘虜及被抑留者を
直に解放すること並に其の保護、手当、給養及指示せられたる場所への即時輸送の為の措置を執ることを命
ず
天皇及日本国政府の国家統治の権限は本降伏条項を実施する為適当と認むる措置を執る連合国最高司令官の
制限の下に置かるるものとす
千九百四十五年九月二日午前九時四分日本国東京湾上に於て署名す
大日本帝国天皇陛下及日本国政府の命に依り且其の名に於て
重 光 葵
日本帝国大本営の命に依り且其の名に於て
梅津 美治郎
千九百四十五年九月二日午前九時八分日本国東京湾上に於て合衆国、中華民国、連合王国及「ソヴィエト」
社会主義共和国連邦の為に並に日本国と戦争状態に在る他の連合諸国家の利益の為に受諾す
連合国最高司令官 ダグラス・マックアーサー
合衆国代表者 シー・ダブリユー・ニミッツ
中華民国代表者 徐 永 昌
連合王国代表者 ブルース・フレーザー
「ソヴィエト」社会主義共和国連邦代表者 カー・デレヴヤンコ
「オーストラリア」連邦代表者 ティー・ユー・プレーミー
「カナダ」代表者 エル・ムーア・コスグレーヴ
「フランス」国代表者 ル・クレール
「オランダ」国代表者 セイ・エイ・ヘルフリッチ
「ニュージーランド」代表者 エル・エム・イシット
(別紙第十)訳 文
一般命令第一号(陸、海軍)
一、帝国大本営は茲に勅命に依り且勅命に基く一切の日本国軍隊の連合国最高司令官に対する降伏の結果と
して日本国国内及国外に在る一切の指揮官に対し其の指揮下に在る日本国軍隊及日本国の支配下に在る軍
隊をして敵対行為を直に終止し其の武器を措き現位置に留り且左に指名せられ又は連合国最高司令官に依
り追て指示せらるることあるべき合衆国、中華民国、連合王国及「ソヴィエト」社会主義共和国連邦の名
に於て行動する各指揮官に対し無条件降伏を為さしむべきことを命ず指示せられたる指揮官又は其の指名
したる代表者に対しては即刻連絡すべきものとす但し細目に関しては連合国最高司合官に依り変更の行は
るることあるべく右指揮官又は代表者の命合は完全に且即時実行せらるべきものとす
(イ)支那(満州を除く)台湾及北緯十六度以北の仏領印度支那に在る日本国の先任指揮官並に一切の陸
上、海上、航空及補助部隊は蒋介石総帥に降伏すべし
(ロ)満州、北緯三十八度以北の朝鮮、樺太及千島諸島に在る日本国の先任指揮官並に一切の陸上、海上、
航空及補助部隊は「ソヴイエト」極東軍最高司令官に降伏すべし
(ハ)「アンダマン」諸島、「ニコバル」諸島、「ビルマ」、「タイ」国、北緯十六度以南の仏領印度支那、
「マライ」、「スマトラ」、「ジァヴァ」、小「スンダ」諸島(「バリ」、「ロンボク」及「チモール」を含む)、
「ブル」、「セラム」、「アンボン」、「カイ」、「アル」、「タニンバル」及「アラフラ」海の諸島、「セレベ
ス」諸島、「ハルマヘラ」諸島並に蘭領「ニュー・ギニア」に在る日本国の先任指揮官並に一切の陸上、
海上、航空及補助部隊は東南亜細亜軍司令部最高司令官に降伏すべし
(ニ)「ボルネオ」、英領「ニュー・ギニア」、「ビスマルク」諸島及「ソロモン」諸島に在る日本国の先任
指揮官並に一切の陸上、海上、航空及補助部隊は豪州陸軍最高司令官に降伏すべし
(ホ)日本国委任統治諸島、小笠原諸島及他の太平洋諸島に在る日本国の先任指揮官並に一切の陸上、海
上、航空及補助部隊は合衆国太平洋艦隊最高司令官に降伏すべし
(ヘ)日本国大本営並に日本国本土、之に隣接する諸小島、北緯三十八度以南の朝鮮、琉球諸島及「フィ
リピン」諸島に在る先任指揮官並に一切の陸上、海上、航空及補助部隊は合衆国太平洋陸軍部隊最高司
令官に降伏すべし
(ト)前記各指揮官のみが降伏を受諾するの権限を付与せられたる連合国代表者にして日本国軍隊の降伏
は総て右指揮官又は其の代表者のみに対して為さるべし
日本国大本営は更に日本国国内及国外に在る其の指揮官に対し何れの位置に在るを問はず一切の日本国
軍隊又は日本国の支配下に在る軍隊を完全に武装解除し且前記連合国指揮官に依り指定せらるる時期及
場所に於て一切の兵器改装備を現状の儘且安全にして良好なる状態に於て引渡すべきことを命ず、追て
指示ある迄日本国本土内に在る日本国警察機関は本武装解除規定の適用を免るるものとす警察機関は其
の部署に留るものとして法及株序の維持に付其の責に任ずべし右警察機関の人員及武器は規定せらるる
ものとす
二、日本国大本営は連合国最高司令官に対し本命令受領の後遅滞なく日本国及日本国の支配下に在る一切の
地域における左の諸点に関する完全なる情報を提供すべし
(イ)一切の陸上、海上、航空及防空部隊の位置及将兵の数を示す表
(ロ)一切の陸軍、海軍及非軍用航空機の数、型式、位置及其の状態に関し完全なる情報を与ふる表
(ハ)日本国の及日本国の支配する一切の水上及潜水海軍艦艇並に補助海軍艦艇にして就役中のもの又は
就役中に非ざるもの及建造中のものの位置、状態及運行を示す表
(ニ)日本国の及日本国の支配する一切の総噸数百噸を超ゆる商船(嘗て連合国の何れかに属し現に日本
国の権内に在るものを含む)にして就役中のもの又は就役中に非ざるもの及建造中のものの位置、状態
及運行を示す表
(ホ)一切の機雷、機雷原其の他の陸上、海上又は空中の行動に対する障害物の位置及施設状況並に右に
関連する安全通路に関する完全且詳細なる地図付情報
(ヘ)飛行場、水上機基地、対空防備施設、港、海軍基地、物資貯蔵所、常設及仮設の陸上及沿岸防備施
設、要塞其の他の防備地域を含む一切の軍事施設及建造物の位置及説明
(ト)連合国の俘虜及被抑留者の一切の収容所其の他の抑留所の位置
三、日本軍及民間航空所管当局は一切の日本国の陸軍、海軍及非軍用航空機が追て其の処理に関し通告ある
迄陸上、海上又は艦上に留ることを保障するものとす
四、日本国の又は日本国の支配する一切の型式の海軍艦艇及商船は連合国最高司令官の指示ある迄之を毀損
することなく保全し且移動を企図せざるものとす航海中の船舶に於ては直に一切の種類の爆発物を無害と
為し海中に抛棄するものとす航海中に非ざる船舶に於ては直に一切の種類の爆発物を沿岸の安全なる貯蔵
所に移転するものとす
五、責任ある日本国の及日本国の支配下に在る軍及行政当局は左記を保障するものとす
(イ)一切の日本国の機雷、機雷原其の他の陸上、海上及空中の行動に関する障害物は何れの位置に在る
を問はず連合国最高司令官の指示に従ひ之を除去す
(ロ)航海を便ならしむる一切の施設は直に之を復活す
(ハ)前記(イ)の実施迄一切の安全道路は之を開放し且明瞭に標示す
六、責任ある日本国の及日本国の支配下に在る軍及行政当局は連合国最高司令官より追て指示ある迄左記を
現状の儘且良好なる状態に於て保持するものとす
(イ)一切の兵器、弾薬、爆発物、軍用の装備、貯品数需品其の他一切の種類の戦争用具及他の一切の戦
争用資材(本命令第四項に特に規定するものを除く)
(ロ)一切の陸上、水上及空中運輸及通信の施設及装置
(ハ)飛行場、水上機基地、対空防備施設、港及海軍基地、物資貯蔵所、常設及仮設の陸上及沿岸防備施
設、要塞其の他の防備地域を含む一切の軍事施設及建造物並に一切の此等の防備施設、軍事施設及建造
物の設計及図面
(ニ)一切の戦争用具並に軍事機関又は準軍事機関が其の運営に関し現に使用し又は供用せんとする他の
資材及資産を製造する為又は此等の製造若くは使用を容易ならしむる為計画せられ又は之に充当せられ
たる一切の工場、製造場、工作場、研究所、実験場、試験場、技術上の要目(「データ」)、特許、設計図
面及発明
七、日本国大本営は連合国最高司令官に対し本命令受預の後遅滞なく前記第六項(イ)、(ロ)及(ニ)に掲
ぐる一切の項目に関し其の各々の数量、型式及位置を示す完全なる表を提供すべし
八、一切の兵器、弾薬及戦争用具の製造及分配は直に之を終止するものとす
九、日本国の又は日本国の支配下に在る官憲の権内にある連合国の俘虜及被抑留者に関しては
(イ)一切の連合諸国の俘虜及被抑留者の安全及福祉は細心の注意を以て之を保持するものとし右は連合
国最高司令官が其の責任を引継ぐに至る迄適当なる食糧、住居、被服及医療を確保するに必要なる管理
及補給の業務を含むものとす
(ロ)適合諸国の俘虜及被抑留者の収容所其の他の抑留所は夫々其の設備、貯蔵品、記録、武器及弾薬と
共に直に之を右俘虜及被抑留者中の先任将校又は指定せられたる代表者に引渡し其の指揮下に入らしむ
るものとす
(ハ)連合国最高司令官の指示する所に従ひ俘虜及被抑留者は連合国官憲が之を引取り得べき安全なる場
所に輸送せらるるものとす
(ニ)日本国大本営は連合国最高司令官に対し本命令受領の後遅滞なく一切の連合国の俘虜及被抑留者の
所在を示す完全なる表を提供するものとす
十、一切の日本国の及日本国の支配下に在る軍及行政当局は連合国軍隊の日本国及日本国の支配する地域の
占領を援助すべし
十一、日本国大本営及日本国当該官憲は連合国占領軍指揮官の指示ある際一般日本国民の所有する一切の武
語を蒐集し且引渡す為の準備を為し置くべし
十二、日本国の及日本国の支配下に在る軍及行政官憲並に私人は本命令及爾後連合国最高司令官又は他の連
合国軍官憲の発する一切の指示に誠実且迅速に服するものとす本命令若くは爾後の命令の規定を遵守す
るに遅滞あり又は之を遵守せざるとき及連合国最高司令官が連合国に対し有害なりと認むる行為あるとき
は連合国軍官憲及日本国政府は厳重且迅速なる制裁を加ふるものとす
十三、日本国大本営は連合国最高司令官に対し前記第二項、第七項及第九項(ニ)に要求せらるる情報を提
供し得べき最も速なる日時を直に通報するものとす
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