ひとりごとのつまったかみぶくろ


災害ボランティアコーディネーターとは


  災害ボランティアとは
  被災者のニーズとボランティアのニーズを結びつける災害ボランティアコーディネーター
  災害ボランティアコーディネーターと災害ボランティア支援センター
  災害ボランティア活動の希望者は
  災害ボランティア支援センターでのコーディネート業務
   《災害ボランティア支援センターの組織体制》
   《ボランティア派遣依頼の受け付け(ニーズの受理)》
   《ボランティア募集票の作成と掲示》
   《災害ボランティア活動希望者の受け付け》
   《ボランティア活動の応募》
   《活動説明とグループ結成》
   《確認書兼報告書の活用》
   《募集票等の管理》
   《活動終了》
   《災害ボランティア支援センターの運営》
  若干の考察
   《ボランティア活動保険》
   《ボランティアによる賠償事故の責任の所在》
   《ボランティアの負傷や賠償事故等への備え》
   《ボランティアの非行の対策》
   《ボランティア派遣の責任》
   《ボランティアの適正な選別》
   《迷惑ボランティアにならないように・させないために》
   《派遣されるボランティアの心得》
   《ボランティアと地域との協働のために》
   《平時から地域に向けての適切な情報発信と良い関係作りを》
   《地域の役割の理解と被災時の協働に向けて》
   《広域連携、広域補完協力体制の構築》
   《ボランティアのこころの問題》
   《コーディネーターのスキルについて》
  おわりに
  ≪関連情報リンク≫
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災害ボランティアとは

 ある地域で災害が起きたとき、そこで困っている人々やそれを援助する営みに対し、お手伝いしたいという志をもって、余力のある人が、報酬を求めず、自発的に行う活動を、災害ボランティア活動と言います。そして、その活動を行う人を、災害ボランティアといいます。(「災害救援ボランティア」「防災ボランティア」といっている人々もおられます。)

 ある程度、ボランティア活動の経験を持っている人であれば、被災地に赴いたとき、状況を見、ニーズを見つけることができることでしょう。例えば、避難所に訪れたとき、援助物資が山積みになっている場面を見つけたならば、整理を手伝いましょうかと申し出したり、また、炊き出し場で薪割りに疲れた人を見つけたならば、交代しましょうかと声をかけたりすることができます。

 1995年に起こった阪神淡路大震災のときは、災害ボランティアを志す人々が、全国から被災地に駆けつけるという事態を引き起こしました。これはとても喜ばしいことのはずですが、現実には、かえって地域に迷惑をかけてしまうということが、多々生じてしまいました。手伝いたいと思っているのに、どこにそんな場があるのかわからない、何をしたら良いのかわからない。役場にそれの問い合わせが殺到し行政の機能を麻痺させる、ボランティアが避難所のスペースの多くを使ってしまうというようなことも多々ありました。ボランティア活動の希望者が被災地になだれ込むことが社会問題になってしまいました。災害が起きたとき、多くのボランティア活動の希望者が駆けつけてくれる、しかしニーズを適切に見つけることができないということが、解決が求められる新たなニーズとなったわけです。

 
被災者のニーズとボランティアのニーズを結びつける
災害ボランティアコーディネーター

 また、災害に遭って家が壊れてしまった、業者に頼みたくても来てくれない、当てにできる家族もいない。誰かに手伝ってほしいと思っているのに、どこにそんな人がいるのかわからない。このような被災者と、災害ボランティア活動希望者の、双方のニーズに対応する機能として生まれたのが、災害ボランティアコーディネーターです。

 この二つのニーズを結びつける人又は機能を、災害ボランティアコーディネーターといいます。この機能の充実と成長は、今日に至り、災害ボランティア活動をしやすくする、経験の少ない一般市民であっても少しの努力で災害ボランティア活動に参加できるという情勢を生み出しました。善意の人々をより増やすという気運を育てることにもなったわけです。

 
災害ボランティアコーディネーターと災害ボランティア支援センター

 では、災害ボランティアコーディネーターは、どこにいるのでしょうか。

 阪神淡路大震災のときは、この機能の必要性を感じた人が、ボランティアとして、自発的に、行政機関に先駆けて、被災地のニーズを整理しボランティアにそれらを紹介する拠点、すなわち災害ボランティアセンターを設けました。このときの実績を見た行政が、この機能の重要性を認識し、その後、各自治体が整備する防災計画に、ボランティアのことが記されるようになっていきました。

 私が住んでいる市では、市内に広域の災害が起きたとき、市の社会福祉協議会がある建物の一室に、災害ボランティア支援センターを開設するということになっております。社会福祉協議会の主導でセンターを立ち上げますが、その要請に基づき、災害ボランティアコーディネーターに登録してある人がそこに参集して、災害ボランティア支援センターの立ち上げと運営のお手伝いをすることとなっております。

 
災害ボランティア活動の希望者は

 災害ボランティア活動を希望する人は、災害ボランティア支援センターの開設を見計らって、そこに参集すれば、適切な情報を得ることができます。でも、電話による問い合わせは注意しなければなりません。問い合わせの殺到により、センターや関係者の機能を麻痺させてしまう可能性があるからです。インターネットから情報を得ることが推奨されています。

 災害ボランティア支援センターを介しない災害ボランティア活動は、現地に迷惑をかけてしまうリスクが高いです。関係機関等からの災害ボランティアを求める情報を得てから現地に赴く態度が大切です。

 できる限り、現地のニーズの状況を把握してから赴くことが大切です。被災者と直接関わりを持つことが災害ボランティア活動と思っている人が多い感じがしますが、現実はそれとはかけ離れた地味な仕事、汚れる仕事、力仕事等さまざまな活動が待っています。これらに応ずる意思を持って赴くことが大切です。

 災害ボランティアの鉄則は、"自己完結"です。ボランティアに求められることは、労力を提供することだけです。現地でのほどこしを期待してはいけません。活動に必要と思われる用具は事前に調べて持参すべきです。活動に適した服装で赴き、自分を守るという安全対策を十分とって、水や食料はもちろん、衣服の汚れに備えてエプロン類や着替えも必要です。軍手や腕抜き、脚絆、マスク、救急絆創膏、ペンチ、笛、手鏡、方位磁石、ポリ袋に入れたおしぼりほか、持っててよかったと思うものがいろいろあります。時には携帯簡易トイレを持っていくということもあります。宿泊を考えているのであれば、旅館等の手配や予約を自分で事前に済ませておきます。テントと寝袋を要する場合もあります。避難所に泊まらせてもらおうというのは言語道断です。通常の観光旅行よりも出費を要すると思われた方が無難です。

 個人が自動車で被災地に入るということは、慎重にしなければなりません。交通渋滞に拍車をかけてしまうことになりかねません。私は、被災地外に自動車を置かせてもらい、積んできた自転車に乗り換えて被災地に入るということもしていました。でもこれも賛否があります。

 活動中の負傷として、釘の踏み抜きなんかがよく聞くところです。ステンレスインソールを用いたり、安全靴仕様の長靴等が推奨されています。熱中症で救急車が呼ばれたという話もしばしば聞きます。
 洪水後の街中は、辺り一面が泥で汚れ、ほこりが舞う様相となりますが、人の糞尿の粉末と思ってよいでしょう。感染症に対する防備が求められます。

 ボランティア活動中の負傷や賠償事故等に対応する保険として、全国社会福祉協議会またはいくつかの都府県等の社会福祉協議会が行っている「ボランティア活動保険」がありますが、これへの加入が活動参加や紹介の条件になっていることが一般的です。これは年度単位の掛け捨て保険ですが、年度中途の加入の場合、手続き完了日の翌日から補償となっています。活動参加の前に、最寄りの社会福祉協議会にて加入手続きを済ませておくようにします。(大規模災害時におけるボランティア活動保険の特例加入が適用された場合、加入手続きの完了直後から補償というものがあります。)
 内外の損保会社が設けている傷害保険商品で、レジャー等の日常生活中に生じる傷害事故や賠償事故に対応するものがあり、ボランティア活動中の事故も補償されると解釈できるものがありますが、実際には補償適用外となることもあるようなので、事前に確認をとっておいた方が無難と思います。

 災害ボランティアが多数求められるような災害が起きたとき、ボランティアの希望者を募集し、バスを仕立てて、被災地までの移動の便を図ってくれる団体があります。インターネットから情報を得ることができます。
 【参考情報T】 【参考情報U】

 
災害ボランティア支援センターでのコーディネート業務

 では、災害ボランティア支援センターで、どのように、コーディネート業務がなされるか、そのひとつの例を紹介することにしましょう。

 《災害ボランティア支援センターの組織体制》
 センターには、@ニーズ受理・ボランティア募集票作成、A事前オリエンテーション場(入場前解説広場)、Bボランティア受付(及びボランティア活動保険加入受付<大規模災害時におけるボランティア活動保険の特例加入適用の場合>)、Cボランティア募集票等掲示・活動説明、D物品貸出返却・報告書受取、Eボランティア希望者待機場所、F管理・支援部、そしてG本部・調整部の、八つのセクションが設けられます。以下、それぞれのセクションの機能です。

 《ボランティア派遣依頼の受け付け(ニーズの受理)》…@
 被災者等でボランティアのお手伝いを望む人は、災害ボランティア支援センターに、ボランティアの派遣を依頼することができます。電話でも可能です。センターのニーズ受理担当者が応対し、定められた手順に従って説明と聞き取りを行います。担当者は、ニーズ受理票(様式1)の各欄を埋める形で聞き取っていきます〔記入例〕。それらを聞き取って、それがボランティア活動として可能なもの、適したものであれば、受理となります。受理したものについては、連番をつけ、次にボランティア募集票を作成します。

 その依頼が、@危険が伴うもの、A過重労働のもの、B業者に発注できるもの、C営業の手伝いであるもの、D政治活動と思われるもの、E宗教活動と思われるもの等、一般市民であるボランティアに行わせることが不適切と判断されるものは、その時点で断ります。受理できない依頼については、消防や警察などの他機関への案内や、業者を紹介するなど、上手に応対できることが望まれます。

 なお、C営業の手伝いであるもの、について、かつては業者からの依頼についてはことごとく断る傾向がありましたが、今日では、支援が復興に期するものであれば、積極的に応じようという気風が高まりつつあります。

 住家全壊等認定家屋での作業やその他特殊な作業等でボランティア活動保険の保険金不支払いに該当する場合があります。事前に保険会社や全社協等にその要件や判断基準等を確認しておくことが肝要です。

 ボランティアが作業を行う現場の状況を適切に聞き取ることが大切です。自動車乗り入れの可否、トイレや休憩できそうなところはあるか、コンビニ等開いている店舗はあるか、釘の踏み抜きや熱中症等の危険性はあるか、依頼者は現場でどのように関わることができるのか、必要な機材、必要な配慮等々、作業する身になって状況を想像して、必要なことを聞き取ることが大切です。

 当然、支援センターが確保または備えている人員や資源以上の作業に応ずることはできません。ボランティアの参集数が少ないのに多くの労力を要する作業の依頼を受けたり、稼働できる自動車がないのに重量物の移送の依頼を受けることはできません。このあたりの的確な判定とその受理可否の結論の返答が大切です。

 受理可否判断のプロセス、その決定責任者を決めておくことは大切なことです。受理決定の前にセンタースタッフによる現地調査が必要な場合もあると思います。

 依頼を受理するということは、たとえ無償の作業であるといっても、依頼者の意識からすれば一応請け負い契約成立であるわけです。しかしながら、センターの業務は、あくまでもコーディネートであり、それは、ボランティアが見つからない、応じてくれないというような不確定要素があることを依頼者に伝えなければなりません。この理解と手順を曖昧にしておくと、後でトラブルに発展してしまうことがあります。

 時には思いがけない電話が飛び込んでくることもあります。このセクションの役務は本来は依頼の受理ですが、電話の先の特異な状況や緊急性の度合い等から、それに合わせた対応をしなければならないときがあります。相手の状況として生命の危険が迫っていたり、精神的、身体的な緊迫性等が察せられたならば、たとえセンター業務から逸脱していると判断されたとしても、その話を傾聴し、対応を検討すべきです。助言、手続きの代行、専門機関への通報や引継ぎ、緊急の出動等をしなければならないこともあります。

 《ボランティア募集票の作成と掲示》…@ C
 受理した依頼について、ボランティア募集票(様式2)を作成します。A3判の大きさが適切でしょう。

 インターネットへの接続環境があれば、ボランティア募集票の内容を、ホームページに掲載します。ボランティア希望者の、どんな持参品が必要かなど、事前の判断材料になります。また、参加意思を呼び起こす手助けにもなります。アマチュア無線やミニFMなども、有力な媒体になります。

 しかし、受理した依頼が、私人(例えば被災者の個人から等)からのものである場合は、募集票の作成や掲載などに特段の配慮が求められます。例えば個人宅での作業の場合は、個人情報に類するものやそれを察知させる情報、また活動地の位置や住所は掲載してはいけません。

 これは、残念なことですが、ここに載る情報をもとに、いわゆる火事場泥棒を招いたり、またえせボランティアが、先回りに依頼者に接触し、仕事を請け負って金銭を求めるとかという事態が現実に経験されているからです。正式に受け付けたボランティアであってもこの機会に非行を働くやからがいるということですので、この対策はとても重要です。

 活動については、必ずグループを単位とします。一人でできる作業でも、最低二人のグループにします。

 また多くても七人以下のグループが望まれます。一度に多人数を要する活動である場合は、複数のグループが同時に活動するというスタイルが良いでしょう。

 《災害ボランティア活動希望者の受け付け》…A B C
 災害ボランティア活動の希望者は、災害ボランティア支援センターに参集します。開所時刻を事前に確認しておき、その時刻に手続きを始めることが望まれます。しかし活動の希望者が多い場合は当然混雑しますので、状況と雰囲気を読み取って、時間差参集の配慮も大切なことです。

 災害ボランティア支援センターに着いたら、まず、注意事項や心得等の伝達事項、及び災害の状況、被災地各地の状況、周辺概況地図等が掲示してあるところに行きます。概況の把握とともに、ここのセンターのやり方を把握します。多くの場合、このような場所が、センターの入り口の前等に、事前オリエンテーション場などの名で設けてあります。

 センター側の配慮として、これらの必要事項を確実に伝えるために、ボランティア希望者がある程度集まったところで適宜事前オリエンテーションを行うという方法がよく採られています。この事前オリエンテーションについて、スタッフが掲示物を参考にアドリブで解説される場面をよく見ますが、これは事前に口述用原稿を準備しておいた方が良いでしょう。また、テープレコーダー等を活用して音声による説明を繰り返し流すという方法も有効です。そのようにして、ボランティア希望者のすべてに必要な情報が伝わるように努めます。

 活動を行うに必要な情報を得ることができたら、入場して、まず、ボランティア募集票が掲示してあるセクションに行き、ボランティア募集の概況を把握します。それぞれのメッセージや募集票を見て、活動に加わる心構えや、個々の募集の活動内容、その実施時間、募集人員、応募状況などから、自分にできる、合ったものがあると判断できたら、ボランティア受付のセクションに行きます。ホームページを見る等して、事前にボランティア募集票の内容を把握しておれば、これを省いてすぐに受け付けの手続きをすることもできます。たとえ応募したい募集が今なくても、本日中に新たな呼びかけがあることを期待して、受け付けだけを済ませて、待機場所で待機するという手もあります。

 今日自分が応募できる活動があれば、又は待機して呼びかけを待つ気持ちがあれば、ボランティア受付のセクションに行き、ボランティア受付票(様式3)に記入します。受付票の記入が終わると、受付済票(様式3の下半分を切り離して交付)と応募票(裏面に粘着剤付きの7.5cm四方の用紙:通称ポストイット)、及び名札(通常は布粘着テープでこしらえます。属性に応じて色分けという工夫もされます。)が手渡されます。

 受付済票には、ボランティア活動を行うにあたっての注意書きや連絡事項のほかに、その人に今日のみ有効のものとして割り振られた個別の受付番号が記されております。応募票や名札も含めて、これ以後に記す書類にはすべて自分の名前(フルネーム記入が望まれます)に併せてこの受付番号を記します。これは、センターの、ボランティア一人ひとりの間違いのない識別、動きの把握の便宜に併せて、ボランティアによる非行を抑制するために必要な措置です。これに応じていただけない人については、応募を断るとします。名前にはできる限りふりがなを記してもらうようにします。

 身分を証明するワッペン等を付けてもらうことも有効です。「○○社会福祉協議会承認ボランティア」等の表示があれば、使命感や信頼度も上がることでしょう。

 なお、センターによっては、受け付けの後に初めてボランティア活動を紹介するとか、センターの側で活動と人員の割り振りを決めるというところもあります。これも情報の不用意な流出や、トラブル、非行の防止等のための配意といえます。でも自分にできる活動があるかどうかわからない状態で受け付けをすることの不安な気持ちを考えると、ある程度の事前の情報提示は不可欠かと思い、ここでは上記の手順にしました。
 しかし、たとえそのセンターのやり方に気になるところがあっても、そこのセンターのやり方に従うことが絶対必要です。

 《ボランティア活動の応募》…C E
 受け付けが済んだ人は、ボランティア募集票が掲示してあるセクションに移り、そのボランティア募集票の応募票貼り付け欄に、自分の名前と受付番号を記入した応募票を貼り付けます。応募票の貼り付けの代わりに、募集票の指定欄に名前等を記入という方法もあります。

 そのボランティア募集票に記されている説明時刻になるまで、待機します。

 この時点で応募できる募集がなく、待機になった人は、所定の待機場所で情報が届くのを待ちます。センターのお手伝いを求められたりすることもあるでしょう。

 待機場所でも、注意事項や心得等の伝達事項、災害の状況、被災地各地の状況、周辺概況地図、その他ボランティア活動支援のための事項を記した書面等の掲示のほか、テープレコーダー等を活用して、これらを音声にして繰り返し流すなどして、必要な情報や最新の情報が伝わるように努めます。

 《活動説明とグループ結成》…C D
 ボランティア募集票に記された説明時刻になると、説明担当者が、所定の場所で、集まった希望者全員を前に、点呼ののち、活動内容の説明を始めます。活動地が個人宅などの場合は、この時初めて目的地を伝えます。募集票のコピー(縮小)や、あれば地図などの参考資料を提供し、注意すべき点や配慮を求める事項も含めて、できる限り丁寧に説明します。

 活動内容等の説明に併せて、グループ作りがなされます。集まった人の中から一人、リーダーを選出します。他の人は、そのリーダーのもとのメンバーとして、リーダーの指示に協力すること及びリーダーをサポートすることが求められます。

 グループができたら、説明担当者は、ボランティア活動確認書兼報告書(様式4)の用紙をリーダーに手渡し、その趣旨を伝えます。グループの全員の記名をはじめ、必要事項を記入してもらいます。それが確認できたら、説明担当者は活動確認書兼報告書に送出しサインとその時の時刻を記入します。

 《確認書兼報告書の活用》
 依頼関係者、またはセンターのスタッフが引率者となりグループの責任者になるのが望ましいのですが、実際は、ボランティアだけのグループで現場に赴いてもらうことが多いです。そのような人の便宜を図り、また行動を把握するために、加えて活動後のレビューやフィードバックのためにも、確認書兼報告書の活用が望まれます。「ボランティア活動カード」等と称しやすい名前に置き換えてもよいでしょう。

 物品を借りる場合は、貸出セクションで手続きを行います。確認書兼報告書に、担当者のサインとその時刻が記されます。これが済んだら、現場に向かって出発です。

 現場に着いたら、現場にいる依頼者又は現場担当者に、確認書兼報告書にサインとその時刻を記してもらいます。

 確認書兼報告書は、当日の便宜のためだけでなく、後日、保険適用事件また裁判になった時において求められることがあります。ですから、適切な情報が網羅された書類であることが肝要です。このことを説明し、可能の範囲で正確に、細かく記入してもらうようお願いします。参加したメンバーのすべてが、一文でも記入されることが肝要です。これがその人がこの活動に参加したという証拠になることもあります。

 《募集票等の管理》…F
 グループが出発した後は、応募票が貼り付けられた募集票が、そのまま活動管理票になります。氏名という個人情報が記されているわけですから、いつまでも掲示セクションに掲示しておいてはいけません。スタッフの詰め所である管理・支援部のセクションに、受付票と共に整理して管理し、ボランティアや外部などから連絡が入ったときなどに備えます。

 《活動終了》…D
 現場での活動を終えたら、グループの全員が一緒にセンターに戻ります。センターに到着したら、借りた物品を返却し、確認書兼報告書を提出して、グループは解散となります。センターに余裕があれば、報告書の提出の際、スタッフにより、グループの全員がおられるところで報告内容の口頭による確認、労いの言葉を伝える場を設けることが望まれます。緊張をほぐすアプローチ、クールダウンの対処も大切です。

 貸与物品の返却の際、その物品の洗浄や収納の作業は、センターのスタッフが専任で行った方が良いでしょう。衛生保持等の観点から、特別な配慮を要することがあるからです。

 一日完結主義が原則です。翌日のボランティア活動を希望する場合も、心機一転して、同じ手順で進められます。ボランティア受付票も再度書いてもらいます。

 《災害ボランティア支援センターの運営》
 センターは、午前9時に開所、午後5時の閉所を原則とします。開所時刻前に参集するボランティア希望者もおられるので、注意事項や心得等の伝達事項、このセンターのやり方の解説書等、活動を行うに最低限必要な情報の掲示はセンターの外(事前オリエンテーション場)に終日しておくべきでしょう。集まった人を見て、開所時刻前に事前オリエンテーションを開始することもあります。開所時刻になったら入場となりますが、その時に、当日分のボランティア募集票が既に張り出されていることが望まれます。また同時にボランティア受付を開始します。受付完了者は、掲示されたボランティア募集票のひとつに応募票を貼付します。応募した活動の説明時刻までは待機となります。9時半ごろから各活動について順次説明を開始します。説明の終わったグループから順次、現場に送り出します。午後4時半には、すべてのグループがセンターに帰還完了となっているように努めます。

 スタッフの詰め所を管理・支援部とします。ボランティアが活動中、その人たちの応募票が貼付された募集票(活動管理票)や受付票を適切に管理し、ボランティアや外部等から連絡が入ったときに備えます。事故やトラブルなどの情報が入ったときは、そこに詰めているスタッフを割いて支援に向かわせます。

 センターとして、自治体の災害対策本部や関係部署との適正な連絡体制があることは必須です。そしてそれらとの遣り取りから情報化し、適宜、災害の状況、被災地各地の状況、周辺概況地図、その他ボランティア活動支援のための事項等を記した書面を作成、印刷します。それを、ボランティアに配布、またセンター内に掲示します。併せて、広域への発信も行います。ボランティア活動終了者が提出した報告書の内容も直ちに分析して、活動支援にフィードバックさせなければなりません。これらのことを本部・調整部のセクションが担います。

 センターの中では、けっこうトラブルが起こります。説明不足、誤った又は曖昧な情報、質問に答えられない、無視、ほかりっぱなし、経験したやり方と違う、希望する募集がない、等々。ボランティア希望者の、センタースタッフに対する苦情の攻撃は、正直いやなものです。そのような場面を目撃したら直ちに対処するスタッフが不可欠です。すぐにその場に直行してその人を引き離して代わりに苦情を聞く、そして適切に助言し問題を解決する役割のスタッフを決めておくことが大切です。

 以上記したことは、原則であり、このとおりにならないことは当然あります。臨機応変に調整し、安全に遂行されるように配慮することが求められます。

 
若干の考察

 《ボランティア活動保険》
 災害ボランティア支援センターで、ボランティア活動の希望者が受けることができる援助は、コーディネート機能だけです。自己完結といわれるように、ボランティア活動の遂行については、すべて自分の責任で完結することが求められます。たとえ事故にあって負傷したとしても、活動先で物を壊してしまったとしても、原則的にはその当事者間で解決しなければなりません。このことにセンターは関与できません。だから、ボランティア活動保険の未加入者には、活動を紹介しないことにしています。

 《ボランティアによる賠償事故の責任の所在》
 センターが受理した依頼で、派遣したボランティアが依頼者に損害を与えてしまった場合や、センターが紹介して活動に従事したボランティアが負傷してしまった場合など、誰がどの程度の責任を負うかについては、議論があります。災害ボランティア支援センターが、行政の機能や規定のもとで開設されたものであれば、公的機関の責任を論議することはできるでしょう。このことについて、現在の法体系はどのように判断するのか、このあたりの情報や事例を持っておられる方がおられましたら、教えていただけることを希望します。
 例えば、センターからボランティア派遣を受けた依頼者から、後日、「派遣されたボランティアが、駐車してあった自動車を傷付けたようだ」というような訴えがあった場合、災害ボランティア支援センターは、どのように対処すべきと思いますか。それをしたボランティアが特定できなかったとしたら、損害賠償の責任はどこにあるでしょうか。

 《ボランティアの負傷や賠償事故等への備え》
 現場で、ボランティアが負傷した、ボランティアが家財等を壊した等の事態に備えて、ボランティア活動保険に加入します。しかし、そのような事態が実際に起こっても、その事実や状況を証明する資料や情報がなかったため、それが適用されなかったということもあるようです。そのようなときに力を発揮するのが、報告書等の記録です。「ボランティア活動確認書兼報告書」は、当日の便宜のためのものだけではなく、保険適用事件また裁判になった時において求められる資料となるものです。ですから、これの取り扱いをおろそかにしてはいけません。5W1H等、適切な情報が網羅されたものになるよう書式を整える配慮が大切です。参加者全員の記名のほか、参加したメンバーのすべてが、一文でも記入されることが肝要です。これがその人がこの活動に参加したという証拠になることもあります。
 よって、支援センターの活動が終了した後も、「ボランティア活動確認書兼報告書」だけは、相当の期間、保管しておくことが肝要です。
 でもひとつ気になっていることがあります。現場での活動を、通常、グループを単位として行わせているわけですが、その場合のリーダーの認識についてです。リーダーは、単なる連絡とりまとめ役なのか、グループの責任者なのか、それによって、ことが起きたときの法的な責任はまったく違います。これについての議論等があれば、教えていただけると嬉しいです。

 《ボランティアの非行の対策》
 全国の実態を見て、気になっていることは、いわゆる火事場泥棒や、えせボランティアの存在、また送り出したボランティアの非行についてです。このページについて、登載後、大きく内容を修正したわけですが(修正版)、以前の形(初版)では、へたをすると、えせボランティアなどを誘発する可能性があると評価できたからです。非行等の発生に対して、あまりにも無防備であったわけです。今回は書かなかったのですが、免許証などによる本人確認の手順が本当は必要なのかもしれません。この修正で、この対処としてどの程度有効かを確かめる機会はまだ得ていませんが、皆さんの実践を通して、多くのことを教えていただけることを希望します。

 《ボランティア派遣の責任》
 また、今回は、「ボランティア活動確認書兼報告書」と記しましたが、実は「ボランティア活動委託書兼報告書」としたかったというのが本心です。「派遣したグループが間違いなく支援センターが委託したボランティアである証明書」という機能を持たせたかったからです。しかし、災害ボランティア支援センターに、はたして委託する権限や機能が存在するのかということが迷いました。支援センターの機能はあくまで「紹介」であり「委託」ではないという考えがあるからです。しかし紹介する以上は依頼者に対する責任があるはずで、トラブルが生じたとき、「センターは一切責任を持ちません」という口実になってしまう可能性に疑問を感じます。このことについての皆さんのお考えを知りたいところです。


 《ボランティアの適正な選別》
 災害ボランティア支援センターに参集されるボランティア希望者の意識は、実に様々です。純粋に困った人を援けたいという方もおられれば、旅行気分の人、ここぞ我が出番だとはしゃぎ回る人、等々。これらそれぞれの心持ちの良い悪いを言うことはできませんが、被災地に流れる人々の心情を察して、自分の気持ちをセーブする心、上手に場の雰囲気に合わせられる態度が大切と思います。
 センターに参集されるボランティア希望者の中には、服装や所持品、態度等を見て、ボランティアとして派遣するに適しないと判断できる人がおられることがあります。その場合は、理由を伝え、丁重に断ることも重要です。この断り方の技術の練磨も大切なことと思います。

 《迷惑ボランティアにならないように・させないために》
 「迷惑ボランティア」という言葉がありますが、無意識のうちにそれをしでかしてしまうことがあります。しでかしやすいこととして、一に「身勝手な行動」、二に「ひとこと足らず」というところでしょうか。一としては、写真撮影、依頼されたこと以上の援助ということがよく聞かれるところです。二としては、例えば依頼者宅の床が泥で汚れて土足で上がるしかないと思われる状態であったとしても、「土足で上がってもよろしいでしょうか」と家主に断りの言葉を述べて承諾を得てから上がるという心遣いが求められます。これらのことを、送り出す前のオリエンテーションで、十分にボランティアに伝える必要があります。

 《派遣されるボランティアの心得》
 ボランティア活動を行う現場に着いた後、現場で新たな仕事を要請されることがあります。しかし、支援センターで紹介された活動以外の仕事を安易に引き受けてはいけません。そのような要請をされた場合は、まずは支援センターに相談する必要があります。それは別の依頼として、新たに支援センターにボランティア派遣依頼の手続きをしてもらうのが普通です。


 《ボランティアと地域との協働のために》
 これまでの災害ボランティア支援センターの開設の状況を見ると、センターに参集するボランティア希望者に比べて、ボランティア派遣の依頼が少ないという状況がうかがえます。ニーズはあるはずなんだけど、センターがあるということを現に困っている人が知らないということがこれを引き起こしているとも言えます。これの対処として例えば、被災地パトロールとか安否確認という名目で、ボランティアが戸別訪問を実施するケースも耳にしますが、これに対し、援助の押し売りだという苦情の例もあり、難しい問題と思われます。聞き合わせのために地域を回るということが必要な場合もあると思いますが、そのときは、その地の自治会長などの地域役員や民生委員、役場の職員等の方々との同行の上、行うことが大切でしょう。

 《平時から地域に向けての適切な情報発信と良い関係作りを》
 支援センターやボランティアの援助について、地域の人々、被災者の方々の信頼を得るためのアプローチは大切なことです。例えば、地域の要職者や有力者宅に援助が入ったことが付け火になって、地域の信頼を得るとか周知の糧となる場合もあります。このあたりの作戦も大切と思います。そのためにも、平時から適切な情報発信を励行し、地域の人々との良い関係を作っておくことが大切と思います。


 《地域の役割の理解と被災時の協働に向けて》
 各地の市町村の地域防災計画(災害対策基本法第40条に基づく)を調べると、地域の自治会・町内会等に、自主防災会とか消防クラブ等と称される組織を設置させ、地域に災害が起きたときの自助的な動きを求める記述が目立ちます。私が住む市の地域防災計画には、災害発生時においては、初期消火、地域内被害状況等情報の収集、救出・救護の実施・協力、住民への避難勧告等伝達、集団避難の実施、炊き出しや救助物資配分に対する協力、避難所運営関与などが記されています。しかしこれまでの各地の経験からすれば、防災についての訓練が十分でない一般的な自治会に、突如この役割が求められても、適確に動くことは難しかったという実態があるようです。地域防災計画が想定する役割を自治会(自主防災会)にそのすべてを求めることは無理があると思います。そこで、災害発生時における地域内の役割分担が大切になります。被災地支援のプランニングやボランティア確保、コーディネート等の実動部分は社会福祉協議会やNPO等が担い、自治会等は地域の細かい住民情報の類をそこに提供するというように役割分担ができれば、双方がそれを活用しあって機能的に動くことができると思います。そのためにも、社会福祉協議会やNPO等は、平時において、地域の自治会等(民生委員協議会や保健活動推進員の団体等も対象かと思われます)に、適切な案内と説明を励行し、良い関係を作っておくことが大切と思います。


 《広域連携、広域補完協力体制の構築》
 被災の地に支援センターを立ち上げるということは、被災者自身がそれを立ち上げるということでもあります。その担い手自身がダメージを負ったため、支援センターが立ち上げられない、センターの正常な機能の維持が困難ということもあると思います。そのようなときに地域外から駆け付けてくれる人々や機関があればとても心強いと思います。平時において、近隣市町村社会福祉協議会相互、県社協、日赤県支部、その他関連団体諸機関等との良い関係を作っておくことが肝要と思います。協定を組むとか、協議会や連絡組織、合同会議等を作っておくことも有効と思います。


 《ボランティアのこころの問題》
 被災後におけるこころの問題として、よくPTSDのことが取り上げられますが、次のことも気になっていることの一つです。被災後一定の時期以後に襲われる気分の高揚感(躁的防衛と呼ばれているそうです)は、被災者や救援者のみならず、ボランティアや、支援センターを運営しているコーディネーターをも襲うものです。これのために、センターの業務が終わった後の夜の反省会の場がドンチャン騒ぎになってしまうこともあるとのことです。この躁状態の反動なのでしょうか、ボランティアから帰った後、何日も、虚脱感等の体の不調にさいなまれたということはよく聞くことです。これをコントロールする効果的な術についてはまだ持ちえていませんが、これについての調査や研究があれば、教えてくださることを希望します。


 《コーディネーターのスキルについて》
 しばしば災害ボランティアコーディネーターのスキルはどうあるべきかと問われることがあります。これについての普遍的な答はないと思いますが、もし私に問われたなら次のように答えたいと思っております。(1)地域や制度、福祉等に関係する社会資源についての広い知識、(2)障害者や老人、乳幼児、在住外国人、またこころの問題や食物アレルギー等の特殊な属性やニーズを持つ人々についての広い知識、(3)迷惑ボランティアやえせボランティアを見抜き、それを排除する見識や技術、(4)コーディネーターは災害ボランティア支援センター開設の主体者である社会福祉協議会等に対するお手伝いであるという認識やスタンス、(5)コーディネーター業務にかかる責任の理解と受容、(6)自分の後継者、次世代の人材を育て上げる器量、そして(7)想像力、です。皆さんはどう思いますか。

 
おわりに

 以上ここに記したことは、この種の研修会で教習される内容や推奨されている手順と異なっているものがいくつかあります。当初はそれらをベースに実践を試みたわけですが、実際に訓練の場などで運用してみると何か気になるところがあり、机上で修正したものです。ですから、読まれて、違和感を感じられた方もあるかと思います。忌憚のない意見がいただけることを願っています。

 センター運営や活動についてのマニュアルのいくつかが、インターネット上に公開されておりますので、それらを参考にされれば、よりイメージをふくらませることができると思います。

 読んでくださり、ありがとうございました。(初版2005.8.30、修正版2007.7.29、最終微修正2020.2.9)





≪ 関 連 情 報 リ ン ク ≫

   災害ボランティア体験記
     2016年熊本地震においての私のボランティア活動体験記です

   災害ボランティア支援センター
     私の体験談として(04年宮川村台風災害)

   災害時アマチュア無線連絡会活動マニュアル試案
     災害時におけるアマチュア無線を活用したボランティア活動の試案です



   災害救援活動におけるボランティア支援のあり方・提言   32k
     1999年6月3日 「広がれボランティアの輪」連絡会議

   災害時における福祉救援活動の指針            55k
     社会福祉法人鳥取県社会福祉協議会 1997年3月策定




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