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 社会保障制度審議会勧告集 昭和25年度


社会保障制度に関する勧告
                               昭和二十五年十月十六日                                社会保障制度審議会会長発内閣総理大臣宛                    社会保障制度に関する件  本審議会は客年五月審議会の設置と同時に社会保障制度に関して慎重審議を行ってきたが、現下の社会経済事情並 びに日本国憲法第二十五条の本旨に鑑み緊急に社会保障制度を整備確立するの必要ありと認める。よって、本審議会 は、政府が直ちに社会保障制度の企画、立法を行うよう社会保障制度審議会設置法第二条第一項の規定により、別紙 のとおり勧告する。  なお、社会保障制度は各省庁の所管事務にまたがり、これが統一整備の事務は複雑ぼう大であるから、政府は新制 度の実施準備のため速かに独立の企画機関を設けるよう御配慮せられたい。    昭和25年10月16日                                         社会保障制度審議会会長                                                大内兵衛  内閣総理大臣 吉田 茂殿                       序    説     時代はそれぞれの問題をもつ。     敗戦の日本は、平和と民主主義とを看板として立ちあがろうとしているけれども、その前提としての    国民の生活はそれに適すべくあまりにも窮乏であり、そのため多数の国民にとっては、この看板さえ見え    難く、いわんやそれに向かって歩むことなどはとてもできそうではないのである。問題は、いかにして    彼らに最低の生活を与えるかである。いわゆる人権の尊重も、いわゆるデモクラシーも、この前提がな    くしては、紙の上の空語でしかない。いかにして国民に健康な生活を保障するか。いかにして最低でい    いが生きて行ける道を拓くべきか、これが再興日本のあらゆる問題に先立つ基本問題である。     問題はそれぞれの解決法をもつ。     貧困の問題は旧い問題である。旧い日本ですら、それぞれの時代においてそれの貧乏退治の方法をも    った。このことはわれわれの民族のヒユマニチーの歴史が十分に実証するところである。けれども、同    じ旧い問題でもその解決の方法は、今日においては、全く別のものでなくてはならぬ。というのは、いま    や人間の生活は全く社会化されておるからであり、またその故に国家もまたその病弊に村して社会化さ    れた方法をもたねばならぬからである。すでに外国においては、いわゆる社会保障の制度が著明な発達    をとげているのはこのためであって、国によっては、「ゆりかごより墓場まで」すべての生活部面がこの    制度によって保障されているとさえいわれる。日本でもこういう制度なくして、この問題が解決できる    とはいえない。そしてその証拠には日本でもすでに久しくその嫩芽はあるのである。要するに貧と病と    は是非とも克服されねばならぬが、国民は明らかにその対策をもち得るのである。     いまやわれわれは力をつくして問題の解決にすすまねばならぬ。     こういう当面の事態のもとに、わが社会保障制度審議会は1年半にわたる勤勉な努力をつづけて、日    本におけるこの問題を研究し、ついに日本において直ちに実施し得べき案を立てた。われわれは、これ    を以て、日本の当面する最大の問題について現在の日本において得られる最善の案であると信ずる。諸    君! 諸君は私のこの言を以て笑うべき妄語とするなかれ。なぜならば、わが審議会40幾人はこの道の    エキスパートであって、その人々の意見はほぼすべてここに盛られているからだ。またさらに、多くの    国民の声がこのうちにとり入れられてあるからだ。こういえば、諸君は直ちに、それにしてもお前のこ    とばは大言にすぎるというであろう。そうだ。それは私も知っている。実のところ、私は、一応かくい    うことによって、読者諸君の好奇心をそそりたいのである。そして諸君の批判を挑発したいのである。    そこで諸君! 私をしてもう一段進んでわれわれの真意を語らしめよ。われわれ審議会は、ここに一応    の審議を終え、一応の成案を得たとはいえ、これによって問題が解決したなどとは決して思っていない    のであり、われわれの前途はなお多難であると思っているのである。そこで、われわれは本案について    ひろく天下の批判を仰ぎ、またなるべく全国民の同意を得、その力によって、日本における社会保障制    度が、一歩でも前進することをのぞみたいのである。       昭和25年10月16日                             社会保障制度審議会会長 大 内 兵 衛    社会保障制度に関する勧告  日本国憲法第二十五条は、(1)「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」(2)「国は、す べての生活部面について社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」と、規定して いる。これは国民には生存権があり、国家には生活保障の義務があるという意である。これはわが国も世界の最も新 しい民主主義の理念に立つことであって、これにより、旧憲法に比べて国家の責任は著しく重くなったといわねばな らぬ。  いうまでもなく、日本も今までにいろいろの社会保険や社会事業の制度をもっている。しかしながら、そのうちに は個々の場合の必要に応じて応急的に作られたものもあって、全体の制度を一貫する理念をもたない。その上長年に わたるインフレーションはこれらのどの制度をも財政難におとしいれその多くはいまや破綻の状態にある。しかも戦 争は国民の生活を極度に圧迫して、いまや窮乏と病苦とに耐えないものが少くない。ことに家族制度の崩壊は彼等か らその最後のかくれ場を奪った。  社会保障制度審議会は、この憲法の理念と、この社会的事実の要請に答えるためには、一日も早く統一ある社会保 障制度を確立しなくてはならぬと考える。いわゆる社会保障制度とは、疾病、負傷、分娩、廃疾、死亡、老齢、失業 多子その他困窮の原因に対し、保険的方法又は直接公の負担において経済保障の途を講じ、生活困窮に陥った者に対 しては、国家扶助によって最低限度の生活を保障するとともに、公衆衛生及び社会福祉の向上を図り、もってすべて の国民が文化的社会の成員たるに値する生活を営むことができるようにすることをいうのである。  このような生活保障の責任は国家にある。国家はこれに対する綜合的企画をたて、これを政府及び公共団体を通じ て民主的能率的に実施しなければならない。この制度は、もちろん、すべての国民を対象とし、公平と機会均等とを 原則としなくてはならぬ。またこれは健康と文化的な生活水準を維持する程度のものたらしめなければならない。そ うして一方国家がこういう責任をとる以上は、他方国民もまたこれに応じ、社会連帯の精神に立って、それぞれその 能力に応じてこの制度の維持と運用に必要な社会的義務を果さなければならない。  しかしこういう社会保障制度はそれだけでは、その目的を達し得ない。一方においては国民経済の繁栄、国民生活 の向上がなければならない。他方においては最低賃金制、雇傭の安定等に関する政策の発達がなければならない。  しかし、わが国の貧弱な財政の下においてはこれらすべてを一時に実現することは困難である。  社会保障制度審議会は上述の見地において、下記の如き社会保障制度案を作成した。もとより社会保障の本来の目 標を距ることは遠いけれども、今日において、この制度のスタートを切ることは絶対の必要であり、また少くともこ の程度のことをやらなければ、当面する社会不安に対する国家の責任を果すことはできない。当審議会は政府が即時 全面的にこの制度を実施するよう勧告する。  なお、この制度の実施には官庁の廃合、医療及び医薬の科学性と公共性を発揮せしめ得るような制度の改革を予定 しており、当然に行政の科学的管理と専門職員の養成とが要請せられる。また、年金の積立金その他必要資金は頗る 巨額に達すべきをもって、その運用については民主的制度が考案さるべきである。われわれはこれらについても政府 の賢明な勇断と慎重な用意とを期待する。       目    次   総   説  第一編 社 会 保 険   第一章 医療、出産及び葬祭に関する保険    第一節 被用者の保険    第二節 一般国民の保険    第三節 医療の範囲、医療機関及び医療報酬   第二章 老齢、遺族及び廃疾に関する保険    第一節 被用者の保険    第二節 一般国民の保険   第三章 失業に関する保険   第四章 業務災害に関する保険  第二編 国家扶助    第一節 扶助の適用範囲及び原則    第二節 扶助の種類及び方法    第三節 扶助の機関及び費用の負担  第三編 公衆衛生及び医療    第一節 公衆衛生    第二節 医療    第三節 結核    第四節 費用の負担  第四編 社 会 福 祉    第一節 社会福祉機関    第二節 福祉の措置    第三節 費用の負担  第五編 運営機構及び財政   第一章 運 営 機 構    第一節 中央及び地方行政機関    第二節 権利の保護の機関    第三節 附属機関   第二章 財  政   補    則            総    説 一、国民が困窮におちいる原因は種々であるから、国家が国民の生活を保障する方法ももとより多岐であるけれど  も、それがために国民の自主的責任の観念を害することがあってはならない。その意味においては、社会保障の中  心をなすものは自らをしてそれに必要な経費を醵出せしめるところの社会保険制度でなければならない。 二、しかし、わが国社会の実情とくに戦後の特殊事情の下においては、保険制度のみをもってしては救済し得ない困  窮者は不幸にして決して少くない。これらに対しても、国家は直接彼等を扶助しその最低限度の生活を保障しなけ  ればならない。いうまでもなく、これは国民の生活を保障する最後の施策であるから、社会保険制度の拡充に従っ  てこの扶助制度は補完的制度としての機能を持たしむべきである。 三、しかしながら、社会保障制度は前述のような措置だけではいけない。更に、すすんで国民の健康の保持増進のため  に公衆衛生に対する行政や施設を同時に推進しなければならない。更にまた、国民生活の破綻を防衛するためには  社会福祉行政も拡充しなければならない。社会保障制度は、社会保険、国家扶助、公衆衛生及び社会福祉の各行政  が、相互の関連を保ちつつ綜合一元的に運営されてこそはじめてその究極の目的を達することができるであろう。          第一編 社 会 保 険 一、保険制度によって社会保障を行う方法にはいろいろあるけれども、今日の経済事情の下においては、すべての国  民に対しすべての事故に備える十分な制度をつくることは不可能であるから、本案においては、国民の労働力を維  持するとともに全国民の健康を保持することに力点をおき、わが国現在の各種の社会保険制度を統合してそれぞれ  の原因に対して給付の拡充と負担の公平をはかることを企図した。 二、現行の健康保険法、国民健康保険法、国家公務員共済組合法、船員保険法、厚生年金保険法、失業保険法及び労  働者災害補償保険法による各制度はすべて本案による社会保険のそれぞれの部門に吸収する。        第一章 医療、出産及び葬祭に関する保険  医療、出産及び葬祭に対する保険制度は、現在の日本では、これを被用者に対する保険と一般国民に対する保険と に区別して取扱うことは止むを得ない。従って、被用者とその他の国民につき保険経営を分ち、被用者の家族は被用 者保険において取扱うこととした。       第一節 被用者の保険 第一(被保険者)   現行の健康保険は原則として常時五人以上の従業員を使用している事業所で働いている者でないとその適用がな  く、また事業の種類によっては適用が除かれている。従って、これを拡張して規模の大小や事業の種類を問わない  で、すべての被用者に均てんして適用されるようにしなければならぬ。もちろん、公務員にも同一の制度を適用し  て公平と機会均等の原則を貫くべきである。しかし、技術的にも適用することはむずかしい者についてはさしあた  りこれを除外することは止むを得ないであろう。 第二(保険事故)   被保険者及びその扶養する家族の疾病(予防を含む)、負傷、分娩及び死亡を保険事故とする。ただし業務上の事  由による疾病、負傷及び死亡は別に扱う。 第三(経営主体)  一、この保険の経営に関する最終的責任は国とするが、経営の民主化をはかるため経営主体は都道府県とする。た   だし、傷病率が多いとか賃金基準が低いため、この保険の経営が困難な地方のことを考え保険料の一部をもって   平衡勘定を設ける必要がある。  二、右の外に、一定数以上の被用者を使用するものについては、組合を設立し、この組合において自主的にこの事   業を行うことが勧奨せらるべきである。 第四(給 付)   都道府県または組合は、条令または規約によりて、附加給付を行うことができるが、少くとも次の給付はこれを  法定給付として実施しなければならない。なお、給付の基準となる報酬は賃金総額とし原則として過去六カ月間の  平均による。  一、被保険者に対する給付   (1) 予防給付     国民の扶病に対する特定の予防措置は、原則として公の責用において行わるべきものである。しかしこのこ    とを完全に実施することは困難であるから、一定の範囲において予防給付を行う。予防給付は原則として現物    給付として費用の一部を負担せしめる。   (2) 療養給付     原則として現物給付で行い、その期間は三年間とする。療養に当っては軽少の一部負担を本人に課すること    ができる。   (3) 傷病手当金     報酬の六割とし、その最高額は日額五百円にとどめ、最低額は日額五十円を保障する。支給期間は、三日間    の待期の以後六月間とし結核性疾病については三年間とする。   (4) 分 娩 費     三千円程度の定額とする。助産については現物給付とすることができるものとし、この場合には分娩費を減    額する。   (5) 出産手当金     報酬の六割とし、その最高額は日額五百円に止め、最低額は日額五十円を保障する。支給期間は分娩の日前    四十二日、分娩の日以後四十二日内とする。   (6) 哺育手当金     一月につき三百円程度の定額とし、六月間支給する。   (7) 葬 祭 料     五千円程度の定額とする。  二、家族給付    扶養家族については、被保険者に対する諸給付のなかから傷病手当金と出産手当金とを除いたすべての給付を   支給するが、哺育手当金の外はそれぞれの給付の十分の七に当るものを支給する。なお、診定をうけた結核患者   については療養給付の一部負担を軽減することができる。 第五(費用の負担)  一、国は、この保険を運営するために必要な事務費の全額を負担するとともに、予防給付及び療養給付に要する費   用の十分の二(結核性疾病については十分の五)を負担する。この負担は標準事務費または標準給付費によるも   のとする。  二、国の負担するものを除いた給付に必要な費用については被用者と使用者がこれを折半負担する。ただし、組合   の場合には使用者の負担割合を増加することができる。費用の一部(例えば予防給付及び療養給付に要する費用   の十分の二程度は定額負担とし、残部は貸金総額を基準として報酬に比例して負担するものとする。 第六(船 員)   船員については、その特殊性よりして政府を経営主体とする。また、現在の制度によって保障されている権利は  これをそこなわないように適切な措置がとられねばならぬ。       第二節 一般国民の保険 第一(被保険者)   前節の被保険者及びその扶養家族を除いた国民を被保険者とする。 第二(保険事故)   被保険者の疾病(予防を含む)、負傷、分娩及び死亡を保険事故とする。 第三(経営主体)   市町村及びその連合体において経営することとし、これを設立することの困難な市町村に対しては国費び都道府  県が強力にこれを助成してその実現をはかるべきである。 第四(給 付)   この保険を行う市町村は条令の定めるところによって、附加給付を行うことができるが、少くとも次の給付はこ  れを法定給付として実施しなければならない。  (1) 予防給付    現物給付を原則とし、その費用の十分の三は被保険者が負担する。  (2) 療養給付    現物給付を原則とし、その費用の十分の三は被保険者が負担する。この負担は診察をうけた結核患者について   は減額することができる。療養給付の期間は三年間とする。  (3) 分 娩 費    二千百円程度の定額とし、助産についてはこれを現物給付とすることができる。  (4) 哺育手当金    一月につき三百円程度の定額とし、六月間支給する。  (5) 葬 祭 料    三千五百円程度の定額とする。ただし、現物給付とすることができる。 第五(費用の負担)  一、国は、この保険を運営するために必要な事務費の全額を負担するとともに、予防給付及び療養給付に要する費   用の十分の二(結核性のものについては十分の五)を負担する。この負担は標準事務費または標準給付費による   ものとする。  二、市町村及び都道府県も予防給付及び療養給付に必要な費用のそれぞれ十分の一を負担する。  三、前二項による負担を除いた費用は被保険者の負担とし、所得割、世帯割及び被保険者数割により負担するもの   とする。       第三節 医療の範囲、医療機関及び医療報酬 第一(医療の範囲)  一、予防給付の範囲    予防給付の範囲は、公の負担において行う予防措置との関連を考え、また濫用を防ぐためその範囲は極めて限   られた範囲にとどめるべきである。  二、療養給付の範囲    おおむね(1)診療、(2)薬剤または治療材料の支給、(3)処置・手術その他の治療、(4)入院、(5)看護、(6)移送の範囲   とし、必要にして十分なものでなければならない。 第二(医療機関)  一、予防給付及び療養給付は、公的医療機関及び本制度に参加した私的医療機関によって行うものとする。医療機   関には薬局を含む。保健所も予防給付及び特殊な疾病の療養給付を担当するものとする。  二、私的医療機関の本制度への参加及び脱退は私的医療機関と保険者との契約を条件として、都道府県知事の指定   によって行われる。ただし、この場合すべての私的医療機関が本制度に参加することが望ましい。 第三(医療報酬)  一、主務大臣はこの制度による医療の内容範囲及び基準を定めるが、その場合医療内容については各科別学界、医   療範囲及び基準については社会保障医療審議会の意見を求めなければならない。  二、医療報酬の算定に関する事項はすべて社会保障医療審議会の建議、または答申をまって行う。しかし、その支   払方法については医療の本質を尊重しその内容を向上せしめるようなものでなければならぬ。しかし、現行点数   単価方式の欠陥を是正し、かつ、全国的画一的方式の強行をさけるとともに地方の実情に応じた各種の方法を採   用すべきである。さしあたっては現行点数単価方式による経験を活用し標準点数を各科別に制定し、医療機関の   一件当り平均請求点数がこれを超過するときは厳重な審査を行い、さらに、制限点数を制定し、一件当り平均請   求点数がこれ以上に及ぶときは超過部分はこれを支払わない方法をとるべきである。これによって、一方におい   ては保険経済の計画性を樹立し、他方においては重症及び慢性患者の医療の万全をはかる必要がある。なお、医   術の高度水準を維持する意味において限られた範囲において技術差を認めるような措置を考慮することが望まし   い。        第二章 老齢、遺族及び廃疾に関する保険  老令者、遺族及び廃疾者に対する年金保険制度も、できれば、すべての国民を対象とすることが望ましい。しかし ながら、経済が窮乏し保険料の負担能力が少ない現在、一般国民に対するこの種の保険は将来日本の経済が十分回復 するときまでまたねばならぬ。  本案においては、この制度は原則として被用者に関するものとした。けれども一般国民に関しても、極めて限定 的な場合に限っては無醵出年金制度を考慮するを適当とする。年金額は最低生活の保障を建前とするところからこれ を定額制とし扶養家族をもつものについては扶養加算を行う。尤も長年勤続の被用者については年齢加算を行い、幾 分でも報酬に比例した生活保障に近づけたものとした。       第一節 被用者の保険 第一(被保険者)   被保険者の範囲は被用者に対する医療保険の対象と一致せしめる。 第二(保険事故)   被保険者の老令、死亡及び廃疾とする。ただし、業務上の事由によるものについては業務災害に基く給付をさき  に行う。 第三(経営主体)   政府とする。 第四(給 付)  一、老令者に対する年金   (1) 十五年以上被保険者として保険料を払込んだ者が、退職当時あるいはその後において男子ならば六十才、女    子ならば五十五才に達した場合には、以後終身間養老年金を支給する。なおこの制度の実施は現在多く見られ    る五十五才停年制が六十才停年制に改められることが望ましいということを前提としている。   (2) 坑内夫、船員その他の特殊労働に従事する者については、前項の年金開始年令を五十才とする。この特別の    扱いは十五年以上右の特殊労働に従事した者のみに適用される。ただし、この特殊労働に従事した期間の計算    は、その実期間に三分の四を乗じて計算する(従って十五年はここでは十一年三月で足りる。)ものとし、こ    の計算により十五年の期間を満たした後はこの計算を行わない。   (3) 養老年金の額は定額とし、月額二千円程度とする。最低生活費としては少くとも月額三千円程度が望ましい    が、国民の保険料負担能力がすでに限界にあり、国庫負担のぼう大な増加もまず望みがたい実状にある。また    扶養加算や年数加算の点を考えると長年勤続者の年金は一世帯おおむね四千円になる。   (4) 扶養加算として、(イ)配偶者(但し男子六十才以上、女子五十五才以上の場合)または、(ロ)五十五才未満の妻    で十六才未満の子または不具の子がある者に対しては、月額千円程度を支給し、(ハ)十六才未満の子または不具    の子に対しては一人につき月額五百円程度を支給する。   (5) 十六年以上被保険者であった者については、一年につきその年金額の三十分の一程度の年数加算を行う。   (6) 一定年数(たとえば五年)以上被保険者であったものが、被用者でなくなった場合には、本人の負担でその    資格を継続し得る途を講ずることが望ましい。   (7) 一定年令(たとえば五十才)以上で始めて被用者となったため、十五年という資格期間を満たすことができ    ない者については、資格期間を減じて多少なりとも年金の給付ができるようにする必要がある。  二、遺族に対する年金   (1) 寡婦年金、かん夫年金及び遺児年金     六月以上被保険者であった者が、在職中死亡したとき(在職中の疾病または負傷による一定期間内の死亡を    ふくめる。なお、災害による死亡については六月間の資格を必要としない。)または、障害年金の受給者が死    亡したときは、その遺族が、(イ)五十五才以上の寡婦、(ロ)十六才未満の子または不具の子をもつ寡婦、(ハ)六十才    以上のかん夫である場合には、月額二千円程度の寡婦(かん夫)年金を支給し、その遺族が十六才未満の子ま    たは不具の子であるときはその子に同額の遺児年金を支給する。   (2) その他の遺族年金     養老年金の受給資格のある者が死亡したときには、右に述べた遺族年金はもちろん支給されるが、これに該    当する者がない場合でも、(イ)父母(男子六十才以上、女子五十五才以上)(ロ)孫(十六才未満のものまたは不具    の子)(ハ)祖父母(男子六十才以上、女子五十五才以上)があれば、この順序で月額二千円程度の遺族年金が支    給される。   (3) 前二項の場合において、十六才未満の子または不具の子があるとき(遺児年金の場合においては一人分を除    く)は、子一人について月額五百円程度の扶養加算を行う。  三、廃疾者に対する年金または手当金   (1) 被保険者が在職中一定程度以上の廃疾になったときには、廃疾の程度に応じて障害年金または障害手当金を    支給する。ただし、その廃疾が疾病に基くものであるときは、六月以上被保険者であったことを条件とする。   (2) 障害年金の額は、廃疾の程度によって一級または二級とし、一級は月額三千円程度二級は月額二千円程度と    する。廃疾の程度が軽く右の年金をうけるまでに至らない者に対してはその程度に応じ一時金として定額の障    害手当金を支給する。   (3) 配偶者及び子については、次のような定額の扶養加算を行う。(イ)配偶者(男子六十才以上、女子五十五才以    上の場合)または、五十五才未満の妻で十六才未満の子または不具の子がある者に対しては月額千円程度を支    給し、(ロ)十六才未満の子または不具の子に対しては一人につき月額五百円程度を支給する。   (4) 十六年以上被保険者であったものについては、養老年金に準じて年数加算を行う。   (5) 廃疾の認定は、都道府県に廃疾認定の機関を設けて行うものとする。  四、女子は養老年金をうける機会が非常に少ないのでその保険料率は男子の場合に比較して相当に低くなければな   らない。 第五(費用の負担)  一、国は、この保険を運営するために必要な事務費の全額を負担するとともに、給付に要する費用の十分の二を負   担する。  二、国の負担するものを除いた給付に必要な費用については、被用者と使用者とが折半負担する。ただし、その十   分の五程度は定額負担とし、残部は報酬に比例して負担するものとする。  三、費用負担率は、一般被用者、女子及び坑内夫、船員、その他の特殊労働者に区別する。       第二節 一般国民の保険 第一(要  旨)   一般国民については、年金保険を実施することが困難なので財政が許すならば、次のような要領の無醵出年金制  度を設けることが望ましい。 第二(適用範囲)   一定範囲の老令者、遺族及び廃疾者とする。ただし、前節の年金をうける者は除外する。 第三(実施主体)   政府とする。 第四(給  付)  一、老令者に対する年金   (1) 七十才に達した者で十八才以上の子や孫(不具の子を除く)がない者に養老年金を支給する。その金額は月    額千円程度とする。ただし、夫婦ともに七十才以上の場合には、そのうちの一人の額を月額五百円程度に減額    する。   (2) 年金受給者に十六才未満の子または、不具の子がある場合には、月額五百円程度の扶養加算を行う。   (3) 年金受給該当者の所得が一定額を超える時は、その超える額の一定割合を年金額から差引く。  二、遺族に対する年金   (1) 十六才未満の子または、不具の子をもつ寡婦に対しては、月額千円程度の寡婦年金を支給し、子一人につき    月額五百円程度の扶養加算を行う。   (2) 十六才未満の子または、不具の子に対しては、月額千円程度の遺児年金を支給し、遺児が二人以上あるとき    は、一人を除いて子一人につき月額五百円程度の加算を行う。   (3) 年金受給該当者の所得が一定額を超えるときは、その超える額の一定割合を年金額から差引く。  三、廃疾者に対する年金   (1) 十八才以上の一定限度の廃疾者には、月額千円程度の障害年金を支給する。なお、配偶者(男子六十才以上    女子五十五才以上の場合)または、五十五才未満の妻で十六才未満の子または、不具の子をもつ者に対して    は、月額千円程度の扶養加算を行い、十六才未満の子または不具の子に対しては、子一人につき月額五百円程    度の扶養加算を行う。   (2) 年金受給該当者の所得が一定額を超えるときは、その超える額の一定割合を年金額から差引く。   (3) 廃疾の認定は、都道府県に廃疾認定の機関を設けて行う。        第三章 失業に関する保険  現在、わが国で社会保障制度の確立が特に要望せられる理由の一つに失業問題がある。しかし、失業問題の解決は 雇用政策の推進以外には真に有効なる方法はあり得ない。失業保険はいわば、これを側面から補足して、短期的失業 者に対して生活保障を与えるにとどまる。本制度もまたかかる観点から失業保険を取扱っているのであって、長期的 要素を帯びる失業解決は、あくまでも雇用政策の推進以外にはあり得ない。 第一(被保険者)   被保険者の範囲は、前章第一節の被用者の範囲と同一とし、すべての被用者につき失業に対する生活保障の機会  が与えられるように拡充する。 第二(保険事故)   被保険者の失業とする。 第三(経営主体)   政府とする。 第四(給 付)  一、離職の日前一年以内に、通算して六月以上被保険者であった者が失業したときは、離職後一年の期間内におい   て、報酬の六割―ただし、傷病手当金と均衡を保つため日額最高五百円、最低五十円とする。―に当る失業手当   金を百八十日の範囲内で支給する。ただし、失業手当金の支給は公共職業安定機関に対する求職の申込を条件と   する。  二、日雇労働者については、資格期間、待期、支給額及び支給期間について別の基準をつくる必要がある。  三、失業の認定及び失業手当金の支給は公共職業安定機関において行うものとする。  四、失業手当金は、疾病または負傷のため労働能力を一時的に喪失している場合には与えられないので、離職後一   年の期間内において発生した傷病については、その期間内に限り本人及び被扶養者の療養の給付をなし得るよう   措置する必要がある。 第五(費用の負担)  一、国は、この保険を運営するために必要な事務費の金額を負担するとともに給付に要する費用の三分の一を負担   する。  二、国の負担があるものを除いた給付に必要な費用については、被用者と使用者が折半負担する。この負担は報酬   に比例したものとする。        第四章 業務災害に関する保険  被用者の業務上の疾病や負傷についても、国家の責任において純粋の社会保険として運営されることが望ましい。 しかしながら、このことは業務上の災害の発生が災害防止、安全衛生教育の十分でないために多いと見られる日本の 現状においては当てはまらない。本制度はかかる考え方から現行の使用者の賠償責任の原則を認めるとともに、この 責任によって生ずる使用者の負担を保険によって分担せしめる機構をそのまま残すことにした。しかし、かかる保険 の機構に対する国家の責任を重視し、その事務費を全額国が負担するという新しい途をえらんだ。 第一(被保険者)   現在の労働者災害補償保険では、おおむね、災害危険の多い事業についてのみ強制適用する方針をとっているが、  労働基準法は、一切の事業につき業務上の事故に対する使用者の補償責任を認めている。ここでは、業務外の事故  に対する保険制度に対応して、あまねく使用者の業務災害に対する補償責任を保険し、すべての労働者の業務災害  に対する補償の権利を確保するように、被保険者の範囲を労働基準法の適用せられる一切の事業に使用される被用  者に拡大し、公務員についても同一の制度の下に包括適用する。 第二(保険事故)   被保険者の業務上の事由による負傷、疾病、廃疾及び死亡とする。 第三(経営主体)   政府とする。 第四(給  付)  一、「療養給付 現在の労働者災害補償保険では疾病や負傷に対する療養補償は原則としては現金給付の建前をと   る。また、六百円未満の療養費はこれを支払わず使用者の責任としている。いずれにしても、被用者自身が一応   療養費を支出しなければならぬという不便がある。この欠陥を除くために、療養補償は原則として現物給付と   し、転帰まで支給する。もちろん、この場合の療養給付の内容及び範囲は労働基準法に定める補償を十分に確保   するものでなければならない。  二、休業手当金 業務上の災害に基く休業中の補償については報酬の六割を転帰まで支給する。  三、障害年金または障害手当金 廃疾の程度により報酬の八月分乃至四月分の障害年金を支給し、または、廃疾の   程度に応じ障害手当金として一時金を支給する。ただし、障害年金は一定の条件により一時金として支給するこ   とができるようにする。  四、遺族年金 一定範囲の遺族に報酬の五月分を遺族年金として支給する。ただし、一定の条件により一時金とし   て支給できるようにする。  五、葬祭料 報酬の二月分に当るものを支給する。  六、船員については、現行制度の基準を低下しないように、特別の取扱いが必要である。  七、業務外の給付基準額が業務上の給付基準額を超ゆるときはその差額を支給する。  八、報酬の算定基準は業務外の場合と同様とする。  九、本制度において給付が行われたときには、その限度において使用者は労働基準法または船員法に基く補償義務   を免れる。 第五(費用の負担)   この保険を運営するために必要な事務費は国が全額を負担し、給付に要する費用は、すべて使用者の負担とす  る。使用者の負担は報酬に比例したものとし事業の災害率に応じてこれを定める。 第六(労働行政との関連)   この保険の運営については、労働行政、とくに産業災害防止及び安全衛生政策との関連を重視して適当な措置を  とることが望ましい。          第二編 国 家 扶 助  国家扶助は、生活困窮に陥ったすべての者に対して、国がその責任において最低限度の生活を保障しもって自立向 上の途をひらくことを目的とする。これは、国民の生活を保障するための最後の施策であることを建前とする。従っ て、他のあらゆる手段によって、その生活維持に努力を払ってもなお最低生活を維持することができない場合に始め て適用されるものである。  本制度に関する提案はすでに、現行の生活保護法にほぼつくされているが社会保障制度の一環としてここに改めて 大綱をかかげる。       第一節 扶助の適用範囲及び原則 第一(適用範囲)   他の制度による生活保障や民法上の扶養義務による扶養をもってしても、なお、最低生活を営むことができない  国民にあまねくこの制度は適用するものとする。 第二(申請扶助の原則)   扶助はさしせまった場合の外、原則として生活困窮者、その扶養義務者、またはその他の同居の親族の申請に基  いて開始するものとする。 第三(扶助の基準及び程度)  一、扶助の基準は、生活困第者の年令、性、世帯構成、所在地域その他の事情を考えて、それぞれの扶助の種類に   応じて十分に最低限度の保障をなすに足るようでなければならない。しかし、実際の適用においてそれがあまり   にも複雑にならぬよう注意する必要がある。  二、右の目的を達するため、扶助の基準額の決定については、主務大臣は必ず社会保障制度運営審議会の意見をき   かねばならない。審議会はまた、つねに国民の最低生活費についての調査研究を行い、合理的な基準額を審議決   定の上、主務大臣にその採択を勧告することができる。  三、扶助は、右により決定した基準額のうち、扶助をうける者の所得能力または、他の制度による保障あるいは扶   養で満すことのできない不足分を補う程度において行うものとする。ただし、現に扶助をうけている者に所得が   生じた場合は、その者の勤労の意志をさまたげないようにするため適切な措置を行う必要がある。 第四(必要即応の扶助)   すべての国民は扶助をうけるについては機会均等であるが、個々の扶助の内容及び実施について、扶助をうける  者の個人的または世帯の実情に即して有効適切に行われなければならない。 第五(資産調査)  一、扶助の要否、種類及び程度を決定するにあたっては、扶助をうけようとする者の資産、所得能力及び生活状態   などの調査を行うものとする。  二、この場合、扶助は原則として世帯を単位としてその要否、程度、種類及び方法を定めるものとするが、これに   よりがたいときは個人を単位として決定するものとする。  三、資産調査を行うにあたっては、資産のうち現に所得の源泉とならないものについては、それが日常生活に必要   なものかどうかを判断して、資産の枠外におくことができる。       第二節 扶助の種類及び方法 第一(扶助の種類)   扶助の種類は次のようにし、扶助をうける者の必要に応じて単独にあるいは併合して支給するものとする。   一、生 活 扶 助   二、教 育 扶 助   三、住 宅 扶 助   四、医 療 扶 助   五、出 産 扶 助   六、葬 祭 扶 助 第二(扶助の方法)  一、生活扶助は、居宅扶助として行い金銭給付によることを原則とする。しかし、この方法が困難のとき、または   扶助をうける者が希望するときには、収容扶助と現物給付によることができる。  二、教育扶助、住宅扶助、出産扶助及び葬祭扶助は金銭給付を原則とする。  三、医療扶助は現物給付を原則とする。  四、医療扶助における医療の範囲、医療機関の指定及び診療方針ならびに診療報酬は、社会保険に準ずるものとす   る。       第三節 扶助の機関及び費用の負担 第一(扶助の機関)   扶助の決定とその実施は扶助をうける者の居住地または、現住地の市町村長が行うものとする。 第二(費用の負担)  一、国家扶助に必要な事務費は、国がその十分の八を負担し、都道府県及び市町村がそれぞれその十分の一を負担   する。  二、本制度の諸給付に要する費用についてはこれと同じ割合で、国、都道府県及び市町村がそれぞれ負担する。          第三編 公衆衛生及び医療  ここに公衆衛生とは、あまねく国民に対して体位の向上や疾病の予防を計るために行う保健衛生活動のことであ る。ただし、環境衛生や衛生取締行政などは含まない。また、医療とは診療や薬剤の支給など一般的医療行為及び施 設のことであるが、いずれも社会保障の立場からなされるものであり、とくに、医学及び薬学の進歩にともない、医 療や医薬品内容の向上とその公共性を高めるようなものでなければならない。社会保障制度はかかる公衆衛生や医療 を全面的にとり入れ、この面においては全国民に公平にあまねく適用せんとするものである。そのために、さし当り 国民疾病の現状よりみてとくに結核、寄生虫、性病などについて対策を強化し、年次計画をもって、これらの予防や 医療に関する施設の整備拡充をはかり体系的な組織の完成に努めなければならない。  公的医療機関や私的医療機関は本制度に協力し、これに従事するものの生活安定をはかる必要がある。国は以上の 施設の推進と拡充のために大巾の補助をなすとともにその責任をもたねばならぬ。ただし、施設の設置や運営につい ては地方公共団体が中心となることが望ましい。  もちろん、特定の目的のために医療機関は直接国が運営し、伝染病予防法その他各種の疾病の予防法はこれを社会 保障制度上との関連の下に、統一して整備する必要がある。       第一節 公衆衛生 第一(保健所)   本制度における公衆衛生は保健所が原則として担当し、公的及び私的医療機関はこれに協力するものとする。 第二(保健所の業務)   本制度における保健所は、現行の保健所業務の公衆衛生に関連のあるものはすべてうけつぎ、かつ社会保険の予  防給付もあつかえるものとする。 第三(保健所の配置)   本制度において、都道府県に、さし当り所要数のモデル保健所をおき、模範的な保健衛生のサービスを行わし  め、保健所はおおむね人口十万につき一カ所の割合で漸次増設していくものである。 第四(支  所)   保健所業務の徹底をはかるため支所をおくことができる。 第五(保健婦)   保健婦事業を拡充し、地区活動を中心に地区内国民の保健衛生を充実するものとする。 第六(施設の整備)   公衆衛生及び医療の適正をはかるため、公的病院、保健所、公的試験所及び権威ある私的試験所施設を整備する  ものとする。       第二節 医  療 第一(医療機関の協力)   本制度の社会保障における予防給付及び医療給付はもちろん、その他の医療は、公的医療機関及び本制度に参加  した私的医療機関をもって行う。 第二(医療の向上と公共化)   社会保障制度における医療は、医学及び薬学の向上進歩に即応し、その公共性を高めるものであり、医療機関は  公私を問わず、本制度に協力参加することにより、その施設、経営及び医療従事者の生活が保障されるようなもの  であることが望ましい。 第三(医療機関の整備)   以上のような立場から、私的医療機関の普及とあわせて医療機関の整備はつぎのようになされなければならない。  一、人口二、〇〇〇の診療圏において公私の医療機関のない場合には、少くとも一診療所を有するように配置する   ことを目標とし、都道府県は、無医地域を解消するため、自らその設置運営をなすものとする。  二、必要な地区には、歯科診療所及び薬局を整備し、産科の病床の足りない地区には、助産所をつくり同時に助産   婦の専門的知識及び技術の向上をはかる。  三、一般病院の偏在を是正し、病床の分布を人口一万当り、大都市に四〇床、その他の市部に三〇床、郡に一五床   を目標として、中央病院、地方病院及び地区病院を分けて整備する。  四、特殊病院として、結核療養所、精神病院及び癩療養所などは、患者数を考慮して整備拡充する。伝染病床は原   則として公的病院に附置するものとする。  五、以上のような施設の増設に伴って、短期中に大量の看護婦の養成が必要であるから応急の対策が講じられなけ   ればならない。       第三節 結  核  本制度においては、結核をとくに重視し国及び地方公共団体が綜合的にして系統的な対策を確立し、左の諸施策が 重点的かつ効果のあがるように実施されねばならない。 第一(健康診断)   健康診断は、被用者については年一回以上の定期健康診断を行い、被用者以外のものは六才―三十才までの年令  層の者について年一回定期診断を行うものとする。   とくに、患者家族、淫侵地区居住者、帰郷者などに対し定期の他に必要な健康診断を行うものである。 第二(予防接種)   予備接種は、特定の年令層の者に対し年一回定期におこない、患者家族、淫侵地区居住者などに対しては定期以  外にも予防接種を行うものとする。この事業のためにはとくに医療技術者、施設、資材の整備をはかり無駄のない  ようにしなければならない。 第三(療養施設)   結核療養施設については、特殊医療施設としての結核療養所及び病院の結核病床は年次計画をもつて十九万床を  確保し、保養所、後保護施設についても同様年次計画をもつて増設する。 第四(診定機関)   公の費用により医療費の軽減を希望する結核患者を診定するため、民主的かつ科学的に運営せられる結核診定機  関を設ける。医師の申請により診定を行うことができる。 第五(患者及び家族の保護)   一般国民の医療保険において傷病手当金制度を考えることが望ましい。 第六(技術の向上及び研究の助成)   医師その他の結核の予防及び治療に従事する技術者に必要な再教育訓練機関をつくり、技術の向上をはかるとと  もに結核の予防及び治療についての研究は直接国の責任においてまたは、国庫の補助のもとに之を推進せしめるも  のとする。       第四節 費用負担  公衆衛生行政に要する事務費及び公衆衛生施設の設置に要する費用は、国と都道府県が折半してこれを負担する。 ただし、その施設を市町村が設置するときは、国が二分の一、都道府県及び市町村がそれぞれ四分の一を負担する。 また結核予防その他国の施策として行われる予防は公の負担において行わるべきものとする。          第四編 社 会 福 祉  ここに、社会福祉とは、国家扶助の適用をうけている者、身体障害者、児童、その他援護育成を要する者が、自立 してその能力を発揮できるよう、必要な生活指導、更生補導、その他の援護育成を行うことをいうのである。  国、都道府県及び市町村は、この目的を達成するために必要な施設を設け、その分布の合理化と整備拡充を図る必 要がある。また、社会福祉に関する業務に従事するに必要な専門的知識及び技能を有する職員の養成確保に努めなけ ればならない。同時に、民間社会事業に対しても、その自主性を重んじ、特性を活かすとともに、特別法人制度の確 立等によりその組織的発展を図り、公共性を高めることによって国費び地方公共団体が行う事業と一体となって活動 しうるよう適当な措置をとる必要がある。       第一節 社会福祉機関 第一(民生安定所)  一、社会福祉業務を能率的、科学的に運営するため、都道府県及び人口十万以上の市に、保健所の区域に準じて、   人口おおむね十万の区域ごとに民生安定所を設ける。  二、民生安定所は、都道府県知事又は人口十万以上の市の市長の権限に属する社会福祉関係業務のうち、被扶助   者、身体障害者、児童、その他援護育成を要する者の面接相談、訪問指導、その他個別処遇(ケイス・ワーク)   及びこれに必要な調査、統計、並びに生活資金、生業資金の貸付、生活相談などの業務を担当する外、市町村   (人口十万以上の市を除く。)の行う社会福祉事業の査察指導、連絡及び調整を行うものとする。  三、なお、現在、市町村が担当している社会福祉業務は、専門職員の育成充実をまって、将来これを民生安定所に   まで引上げることが望ましい。 第二(専門職員の養成及び充実)  一、社会福祉業務の専門化と技術化に伴い、専門の知識技能を有する社会福祉主事の養成確保につとめ、これら専   門家をして社会福祉事務に従事せしめる制度を確立することが必要である。  二、社会福祉主事が行う業務の全きを期するために、社会福祉主事に対する現任訓練制度及び査察指導制度を確立   することが望ましい。       第二節 福祉の措置 第一(被扶助者の指導援護)   現行の生活保護法においては、金銭又は現物の給付による経済保障に属するものと、要保護者個々人の環境、性  格、能力等に応ずる個別処遇に属するものとを同時に規定している。従って、国家扶助を経済保障として確立する  本制度においては、後者に属するものを国家扶助から明確に区別し、社会福祉の一環として取扱うこととする。尤  も被扶助者は特に指導援護を要する者として、特別な福祉の措置を講ずる必要があることはいうまでもない。  一、市町村長は、老衰のため独立して日常生活を営むことの困難な被扶助者を養老施設に収容(収容の委託を含む   以下同じ)して、これを援護する。ただし、これは、自宅における援護が困難である場合においてのみ行うべき   である。  二、市町村長は、身体上又は精神上著しい欠陥があるための独立して日常生活を営むことの困難な被扶助者は救護   施設に収容してこれを援護し養護及び補導を必要とする者は更生施設により、就業能力の限られている者は授産   施設によって、出来うる限りその自立を図る必要がある。ただし、この場合の授産施設は、これらの一定の身体   上又は精神上の欠陥がある者の利用に限るものであり、またその作業収入は全額その作業員に支払われなければ   ならない。  三、市町村長は、生業をたてる能力ある被扶助者に対し、生業に必要な資金、器具を貸与してその者の自立を援助   する。  四、市町村長は、被扶助者に対して、その自由を損わない程度において、生活の維持、向上その他援護の目的達成   に必要な指導又は指示をすることができる。  五、これらの措置を適正且つ迅速に行うため、市町村長は、つねに社会福祉主事をして被扶助者の生活状態を調査   せしめる必要がある。 第二(身体障害者の福祉)  一、民生安定所に専門的更生相談機関を設け、社会福祉主事により、身体障害者に対して職業補導、更生援護施設   への入所斡旋、その他必要な指導相談を行う。  二、身体障害者については、定期にその診査を実施し、これに基いて、必要な医療の供与又は保健指導を行わなけ   ればならない。  三、身体障害者の福祉施設として、身体障害者更生指導施設、中途失明者更生施設、身体障害者授産施設の拡充を   図る必要がある。また、身体障害者のための公営の学校及び工場の設置や、民間工場への就職斡旋を図ることが   望ましい。  四、身体障害者に対しては、安全杖及び必要な補装具を保障するとともに、鉄道運賃の減免その他の優遇的措置を   構ずる必要がある。 第三(児童の福祉)  一、民生安定所に児童相談機関を設け、社会福祉主事により、児童の教育に関する指導及び児童福祉施設への入所   斡旋を行う。  二、乳幼児に対し、保健所等を通じ健康診査を行い、妊産婦、乳幼児の保護者に対し適切な保健指導をするととも   に、その費用を負担する能力のないものについては、公費をもって負担すべきである。  三、乳幼児の健全な育成を図るため、前項の健康診査によって必要と認めた乳幼児に対し、栄養物資を保障する。  四、現在の児童福祉施設は、施設の最低基準よりみて収容人員過剰のもの少くなく、また、未収容の対象者も多数   存することに鑑み、これら施設の整備をはかることが必要である。  五、正常の児童については、前記施設に入所せしめて養育するよりも、里親家庭において養育することがその健全   な育成を期する上に望ましいので、できうる限り里親家庭の普及を図り、且つ里親家庭に対する訪問指導技術の   向上に努めるべきである。  六、母子福祉対策を強化し、児童を養育する寡婦のための授産事業を拡充し、または職業習得に必要な資金の貸与   等の途を講ずる必要がある。 第四、(生活指導相談及び生活、生業資金の貸与)  一、民生安定所に生活指導相談部門を設け、専門技術者によって生活指導相談に応じ、授産施設その他の施設の利   用及び内職の斡旋等の指導を行う。  二、右の外、生活指導部門において、生活困窮者又は生活の困窮に陥るおそれのある者に対し、生活資金及び生業   資金の貸付を行うものとする。 第五(住宅援護)   住宅金融公庫及び庶民住宅を利用することのできないような低額所得者であって、住宅扶助をうけるに至らない  者に対し、公営住宅を建設して低家賃で利用せしめることが望ましい。なお、右の公営住宅の利用については、一  定の入居基準を設け、かつ、適格者の銓衡の方法については特に考慮する必要がある。 第六(老齢者ホーム)   老齢のため独立して日常生活を営むことのできない者で、適当な扶養家庭のない者のために、国及び地方公共団  体は、者齢者ホームを設けこれらの人々の便宜を図る必要がある。老齢者ホームの利用料は、養老年金受給者が利  用し得る程度のものであることが望ましい。 第七(社会福祉施設の基準)  一、社会福祉施設であって、収容して援護するものについては、その種類に従い、その設備及び運営につきそれぞ   れ最低の基準を設け、援護を受ける者の衣食住等すべての生活部面について適正を維持することが必要である。  二、また、施設の従事者についても、専門の知識、技能を有する職員を、一定の基準に従って置かしめることが望   ましい。  三、これらの基準の維持の全きを期するためには、施設の設備及び運営の状況に対する査察指導制度の確立も必要   となる。       第三節 費用の負担 一、社会福祉行政に要する事務費は、国がこれを負担するを原則とするも、都道府県が行うものについては都道府県  が折半負担し、市町村がこれを行うものについては、国が二分の一、都道府県及び市町村がそれぞれ四分の一づつ  を負担するものとする。 二、社会福祉施設の設置に要する費用については、都道府県がこれを設置するときは、国と都道府県が折半負担し、市  町村がこれを設置するときは、国が二分の一、都道府県及び市町村がそれぞれ四分の一づつを負担するものとする。          第五編 運営機構及び財政      第一章 運 営 機 構  本制度は、国が社会保障制度に対する綜合的企画をたて、国自からの責任において、この制度の実施に当ることを 原則とする。しかしながら地方公共団体又は組合の責任において実施せしめる事項も少くない。けれども地方行政機 構については別途検討されているからそれらとの調整を図る必要があるであろう。さしあたりにおいては、以下に述 べる運営機構を採用することが適当であると考える。      第一節 中央及び地方行政機関 第一(中央行政機関)   社会保障制度の一元的運営を期するためには、本制度についての全責任と権限を集中統合して、社会保障省(仮  称)を設ける必要がある。ただし、本制度実施の一部についてはこれを他省に委任することができる。 第二(地方行政機関)  一、社会保障行政を行うため、都道府県知事のもとに次の組織を設けることにする。   (1) 保 険 部(社会保険に関する事務を扱う。)   (2) 民 生 部(国家扶助及び社会福祉に関する事務を扱う。)   (3) 衛 生 部(公衆衛生及び医療に関する事務を扱う。)  二、右三部のそれぞれの下部機関として次の第一線機関を設ける。   (1) 社会保険事務所(適当なる地域ごとに設け、社会保険についての業務を担当する。)   (2) 民生安定所(保健所の区域に準じて、おおむね人口十万を単位とする区域ごとに設け、国家扶助及び社会福    祉についての業務を担当する。   (3) 保 健 所(おおむね人口十万を単位とする区域ごとに設け、保健衛生の業務を担当する。)       第二節 権利の保護の機関 一、社会保険における給付または国家扶助に関する処分などに不服である者の権利を保護するために、第一次審査機  関として各都道府県に各専門の審査官を、第二次審査機関として都道府県に地方社会保障審査会を、第三次審査構  関として中央に中央社会保障審査会を設ける。 二、審査官は独任制とし、審査会は関係官吏、受益者代表、公益代表、専門家などにより構成されねばならぬ。 三、本制度における医療担当者に対する医療報酬の支払及び処分などに不服である者の権利を保護するための特別の  機関を設ける必要がある。       第三節 附 属 機 関 第一(社会保障制度運営審議会)  一、社会保障制度全般の運営に関して、関係官吏、関係各利益代表及び公益代表よりなる民主的な審議会を設け   る。主務大臣及び関係大臣は社会保障に関する企画、立法または運営の大綱に関してはあらかじめこの審議会の   意見を求めなければならぬ。審議会は社会保障の立法及び運営の大綱につき調査研究し、その結果を国会に提出   するよう主務大臣に勧告することができる。  二、この審議会には、社会保険、国家扶助、公衆衛生、社会福祉その他必要な部会を設けるものとする。  三、都道府県及び市町村には、それぞれの行う社会保障行政の運営に関して、第一項に準ずる審議会を設けねばな   らない。 第二(社会保障医療審議会)   社会保障制度による医療に対して、関係官吏、医療関係者、受益者代表、及び公益代表よりなる審議会を設け、  主務大臣の諮問及び建議機関とする。これと同様の機関は都道府県にも設けなければならぬ。 第三(積立金運用審議会)   国で行う社会保険制度の積立金の運用については、関係官吏、受益者代表、公益代表、専門家などよりなる諮問  建議機関を設け、積立金の民主的運用をはかる必要がある。      第二章 財    政  理想的な社会保障制度を実現するためには、国民経済の繁栄と財政の余裕が必要である。しかし、このことは、戦 後疲弊したわが国ではとうてい求めることはできない。本制度は、国民の保険料に対する負担能力がすでに限度に達 しており、財政上の負担もまた著しき増額は困難であろうという前提のもとに組立てられている。もちろん、国と地 方財政の新しいたて方が検討されている現在、本制度において国と地方とがどんな建前及び方法で財政を負担をすべ きかは、なお慎重な考慮を要することはいうまでもない。しかし、差当りそれをいかに分担すべきかについては一応 それぞれの部門において説明しておいた。なお、社会保障に関する予算の編成は、その経済を統一的に調整し、つね に国及び地方財政並びに国民経済との均衡を綜合的に観察しうるようにしなければならない。 第一(事務費)   本制度の施行に必要な事務費は、原則として国が負担する。この事務費は、標準事務費による。 第二(給付費)   社会保険の給付費は、被用者、使用者、及び一般国民が負担する外、国及び地方公共団体においてその一部を負  担し、国家扶助に要する費用は国及び地方公共団体が負担する。その各々の負担割合等については既に各項におい  て述べられている。 第三(施設費)   都道府県が設置する社会福祉施設及び公衆衛生施設の設置に要する費用は、国と都道府県が折半負担し、市町村  の場合には国が二分の一都道府県及び市町村がそれぞれ四分の一を負担する。 第四(社会保険税)   社会保険に関する被保険者の保険料(使用者の負担をも含む)は、すべて目的税として、国又は都道府県の経営  する保険については国の徴収機関により源泉徴収し、市町村の経営する保険については市町村が徴収する。ただし  組合の場合は、保険料として組合が徴収する。 第五(特別会計)  一、国が行う被用者に関する保険事業について料金保険特別会計を設け、次の勘定を置く。   (1) 年金勘定(年金給付についての勘定)   (2) 失業勘定(失業給付についての勘定)   (3) 業務災害勘定(業務災害給付についての勘定)   (4) 医療平衡勘定(医療保険給付についての中央平衡勘定)   (5) 船員医療勘定(船員に対する医療保険給付についての勘定)   (6) 業務勘定(事務費及び施設費などについての勘定)  二、一般国民の無醵出年金に要する費用は一般会計より別途支出するものとする。  三、本会計の積立金の運用については、積立金運用審議会に諮らねばならぬ。    その運用は、できる限り被保険者の福祉のために役立つように行われねばならぬ。  四、都道府県の行う医療保険事業の費用は、一定の比率により本特別会計の平衡勘定に繰入れなければならない。  五、都道府県及び市町村が行う医療保険についてはそれぞれ特別会計を設けねばならぬ。  六、年金保険の給付に要する費用の計算は長期計算方式によるも、当初は保険料率を低くし、漸次それを引上げて   ゆき、積立金額があまりに巨額にならぬよう工夫する。 第六(医療金庫)   都道府県、組合または市町村から医療機関に対する医療報酬の支払を迅速に統一して行うため医療金庫を設け  る。金庫は法人とし、関係者及び公益代表よりなる運営機関を設け、これを民主的に運営せねばならぬ。金庫は中  央に本部、各都道府県に支部を設ける。金庫は一定の支払資金を保有しなければならぬ。          補   則 第一(現行制度との関係)   現行の健康保険法、国民健康保険法、国家公務員共済組合法、船員保険法、厚生年金保険法、失業保険法、労働  者災害補償保険法による各制度は、すべて本制度の社会保険のそれぞれの部門へ、現行の生活保護法、社会事業法  児童福祉法、身体障害者福祉法、社会保険診療報酬支払基金法等による各制度は本制度に、吸収または改組されな  ければならない。 第二(権利義務の承継)   現行諸制度の権利義務はすべて本制度に原則として引きつがれる。また、すでに現在の制度によって保障されて  いる権利は、これをそこなわないよう適切な措置がとられねばならぬ。 第三(恩給制度との調整)   国家公務員に対する恩給制度のなかで、老後の生活保障に相当する部分は本制度に統一して、民間の被用者も機  会を均等にする必要がある。しかしながら、現行の恩給制度のなかには民間事業における退職金に相当するものが  あるから、この部分は存置せしめるよう調整することが適当であろう。都道府県及び市町村にみられる地方公務員  の恩給についてもこれに準ずる取扱いが要請される。 第四(個別措置)  一、現行制度に吸収するに当っては、次のような措置を行うことが必要である。   (1) 現行の健康保険組合及び国家公務員共済組合は本制度の組合に改組する。   (2) 国民健康保険組合及び法人の行う国民健康保険事業は、一定期間を限って本制度に吸収する。   (3) 現行制度における失業保険、厚生年金保険、船員保険及び労働者災害補償保険の会計は、それぞれ社会保険    特別会計に引きつぐものとする。   (4) 現行制度の政府管掌健康保険の会計は、各都道府県の特別会計に按分して引きつぐものとする。   (5) 現行制度における厚生年金保険、船員保険等における脱退手当金は廃止されるから、これについての期待権    を尊重する意味で適当な調整を行う必要がある。   (6) 厚生年金保険、船員保険、または恩給法による資格期間を承継することによって生ずる積立金の不足につい    ては、給付の発生時において国庫負担を考慮すべきである。   (7) 国家公務員共済組合の所有する積立金及び長期給付については特に慎重な措置を必要とする。   (8) 労働基準法及び船員法による災害補償の基準はできる限り統一し、本制度との調整を行う。  二、経過的措置としてその他各種の措置が必要となると考えられるが、例えば被用者の養老年金はその適用範囲が   著しく拡大されるため、すでに高年令に達している者について特別の措置を講ずる必要がある。

《「社会保障制度に関する勧告および答申集」(昭和35年3月 社会保障制度審議会) [原文縦書き] 及び
 「社会福祉関係施策資料集1」(1986.7.27 社会福祉法人全国社会福祉協議会発行) から引用》
 1999.2.11 登載
社会保障制度に関する勧告(国立公文書館デジタルアーカイブ)
http://www.digital.archives.go.jp/DAS/meta/listPhoto?KEYWORD=&LANG=default&BID=F0000000000000008632&ID=M0000000000001784473&TYPE=&NO=
    社会保障制度審議会勧告集
  昭和24年度:生活保護制度の改善強化に関する勧告(1949.9.13) ほか
  昭和25年度:社会保障制度に関する勧告(1950.10.16)
  昭和26年度:社会保障制度推進に関する勧告(1951.10.20)
  昭和27年度:社会保障の最低基準に関する国際労働条約について(1952.5.20)ほか
  昭和28年度:年金制度の整備改革に関する勧告(1953.12.10) ほか
  昭和29年度:社会保障制度の企画運営方法の改善に関する勧告(1955.3.30)ほか
  昭和31年度:医療保障制度に関する勧告(1956.11.8)
  昭和32年度:恩給等の増額に関する意見書(1957.12.19)
  昭和33年度:国民年金制度に関する基本方策について(1958.6.14)
  昭和37年度:社会保障制度の総合調整に関する基本方策についての答申
         および社会保障制度の推進に関する勧告(1962.8.22)

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社会保障制度に関する勧告(1950.10.16) K25
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